EU委員会、GM食品等の承認再開を推進


提案の背景には関係業界や米国への考慮も

 EU委員会は7月13日、遺伝子組み換え(GM)食品等の承認再開に向けた提案を
準備中であると発表した。今秋には、GM食品等の表示、追跡可能性など承認条
件の強化について提案を行い、消費者等の不安を取り除くとともに、早期に承認
再開体制を整備したい意向である。

 EUにおけるGM食品等の流通に関しては、90年の理事会指令(90/220/EEC)に基
づく承認申請が義務付けられており、92年12月〜98年10月までに、オーエスキー
病ワクチン、特定の除草剤への耐性を持つ大豆およびトウモロコシなど延べ18品
目が承認されている。それ以降の承認例は無く、14品目が承認待ちの状況にある
が、現在、上記理事会指令は改正作業中であり、その終了までは、事実上承認が
停止されている。しかし、通常の指令改正作業では、作業終了まで2年程度かかる
と見込まれているため、関係業界および輸出国である米国の不満が高まっている
ことも考慮し、今回の提案を決めたものとみられる。

 なお、加盟国のうち5ヵ国(オーストリア、ルクセンブルグ、フランス、ギリ
シャ、ドイツ)では、理事会指令の救済条項を活用し、EUで承認されたGM作物
(トウモロコシ、菜種)の流通を暫定的に禁止している。


提案の最終目的は消費者と環境の保護

 提案の具体的内容はまだ明らかにされていないが、次の事項が含まれる予定で
ある。

1 改正指令の重要規定(表示、追跡可能性、監視など)を、全加盟国での実施
 前に、(GM食品等の承認手続きに関して)先行実施する。すなわち、新たな
 要件が個別案件の承認要件に追加される。承認申請企業は、申請に際して新要
 件を自主的に取り入れることに同意しなければならず、その内容は承認時に法
 的に義務化される。承認は期限付きとなり、承認品目の管理は強化される。

2 GM食品等の表示規定については今秋までに提案する。

3 GM食品等の追跡体制については今秋までに提案する。

4 その他関連事項の作業を促進する。(環境責任、生物多様性に関し可能性の
 ある長期的な影響の監視・調査や研究など。併せて、バイオ・セイフティ条約
 といった国際状況の進展も考慮する。)

 EU委員会では、本提案の最終目的として、消費者および環境の保護を掲げてい
る。これらはEU各国の重要関心事項であり、今後の議論の行方が注目される。

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