NZ乳業メーカー、ピーク時の生産調整を検討


生乳の過剰生産に対してペナルティを徴収

 ニュージーランド(NZ)最大の乳業メーカーであるニュージーランド・デイリ
ーグループ(NZDG)は7月21日、南島における生乳の過剰生産に対してペナルテ
ィを徴収する計画を発表した。

 この計画は、もともと季節生産性が極めて高いNZの酪農において、生乳生産の
ピーク時である一定期間内に生産量の上限を定め、それを超えた分に対しては、
1リットル当たり30NZドル(約1,560円:1NZドル=約52円)のペナルティを課す
というものである。その上限は、過去3年間で最も高い生産量を記録したピーク
時(連続する10日間)における1日当たりの平均生産量を基礎に定められる。

 さらに、NZDGは、この計画に対し生産者の同意が得られれば、現在南島を対
象に行っている新規参入や規模拡大への規制を撤廃することも公表しており、南
島のみならず北島の酪農生産者の興味も引いている。

 しかしながら、今回の計画について南島酪農生産者組合の代表は「規制撤廃が
前提であれば賛成であるが、生産者の混乱を招く恐れがあるので、十分な説明と
議論が必要」と述べ、慎重な対応を取っている。


コスト削減と併せて生乳生産の平準化を狙う

 今回の計画の背景には、南島の南部を集乳地域とする乳製品工場において、近
年の急激な生乳生産量の増加に伴い、処理能力を超える状況が1シーズンで10日
以上連続して発生し、約400km離れた他の工場への転送を余儀なくされているこ
とがある。このためNZDGは、乳製品の価格競争力を維持するためにも、今後も
生乳生産ピーク時に運搬費用などのコスト増が恒常化することを危惧し、今回の
計画を生乳生産の平準化の方策として打ち出したものとみられる。

 また、乳製品の輸出を促進するNZにとって、本来であれば、工場の集約化に伴
う規模の拡大など、新たな対応が求められるところであるが、乳業メーカーの再
編が進みつつある中で、生産拠点の集約化を行うことは難しく、NZDGとしても
当面は、生産調整で対応せざるを得ないことも背景にあったとみられる。


株主総会の決議を経て来年からの実施を予定

 近年、南島での生乳生産が急激に増加する背景には、新規参入や頭数拡大が進
んでいることが挙げられる。北島のシェアミルカー(自ら牧場を持たず酪農経営
を行う者。NZの生乳生産の50%を担う経営形態)によると、この数年、北島では、
酪農場を含めた農地価格の上昇が著しく、新規参入が難しい状況となっており、
酪農経営を将来的に続けようと思う者は、その土地の安さから南島への進出の意
欲が強まっているとしている。

 その言葉通り、NZにおける南島の酪農は、北島に比べると気候条件は厳しいが、
安価な農地価格により広範な牧草地の確保が容易に行えることから、北島から酪
農家の流入などによって、多頭化による効率化が図られてきている。

 今回の計画についてNZDGは、今後、生産者との討論を重ね、最終的には今年
末の株主総会での決議を経て、来年年明けからの実施を目指したいとしているが、
工場の効率運用を図りたいNZDGと、規模拡大路線を目指す酪農生産者を巻き込
み、成長著しい南島の酪農乳業にどのような影響を与えるか、動向が注目される。

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