台湾の豚飼養頭数はわずかに増加


飼養頭数は、前回調査より0.9%の増加

 台湾では豚の飼養状況を的確に把握し、今後の肉豚の供給予測に資することを
目的として、行政院農業委員会(日本 の農林水産省に相当)が毎年2回、豚の
飼養動向を調査している。今回公表された2000年5月末現在の調査結果によると、
豚の総飼養頭数は前年同期比7.6%増の730万9千頭となった。これを前回調査
(99年 11月)と比較すると0.9%のわずかな増で、97年3月の口蹄疫発生後、初め
て増加に転じた昨年5月末現在の調査以降、引き続き飼養頭数は増加している。

 台湾における主要な養豚地域である彰化縣から屏東縣にかけての6縣では、い
ずれも前回調査に比べて0.4〜2.3%の増加となり、実数では雲林縣が3万2千頭、
台南縣が1万3千頭、屏東縣が1万2千頭、彰化縣が1万1千頭の増加となっている。
しかし、全国23の縣・市のうち9縣・市では、逆に前回調査時よりも飼養頭数が
減少した。

◇図 豚飼養頭数の推移◇


豚価の高値安定が増頭を刺激

 こうした豚飼養頭数の増加の背景には、豚価が高値で安定していることがある
といわれている。昨年の台湾における生体重100kg当たりの平均肉豚卸売価格は、
口蹄疫発生後の徹底した生産調整により、6千元(約2万1千円:1元=約3.51円)
以上と近年にない高値で推移し、特に99年6〜8月半ばには7千元台まで高騰して
いた。その後は、供給過剰などから下降局面を迎えたものの、今年の3月後半頃
から生産の伸び悩みなどで再び上昇に転じ、5月以降は5千元台で推移している。

 このため、結果的に養豚農家の増頭意欲が刺激されることとなり、前々回(99
年5月)および前回(99年11月)調査でも、母豚の増頭が見られている。このた
め、豚の飼養頭数は、現在の増加傾向が続くと予測されている。

◇図 肉豚卸売価格の推移◇


未経産豚と60kg以上の肥育豚は減少

 カテゴリー別に見ると、今回の調査では、前年同期に比べていずれのカテゴリ
ーでも飼養頭数が増加している。これを前回調査時と比べると、未経産豚と60kg
以上の肥育豚がそれぞれ3%強ずつ減少し、その他のカテゴリーでは、少しずつ
ではあるが増加している。

 政府は、60kg未満の肥育豚がいずれも前回調査時の頭数を上回っていることか
ら、今年下半期の豚肉供給は十分であると予測している一方で、未経産豚の減少
について注目している。経産豚が4%近く増加していることや、繁殖雌豚が全体
として前年同期比10.3%増となっているなどの要素はあるものの、安定的に推移
する肉豚供給や豚価に及ぼす影響などについて、今後、注意深く観察することと
している。

豚飼養頭数
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 資料:行政院農業委員会


政府は安易な増頭に三たび警鐘

 口蹄疫発生以降、輸出市場がほとんどなくなった台湾では、世界貿易機関(W
TO)加盟交渉の合意などに基づく関税割当数量を勘案した場合、豚肉の需給バラ
ンスポイントは、出荷頭数ベースで年間1千万頭程度とされている。しかし政府
は、今回の調査結果による経産豚頭数(約80万1千頭)から、これら経産豚が1
頭につき年間13頭の子豚を生産した場合、40万頭程度これを超過すると試算して
いる。

 このため政府は、口蹄疫が清浄化されておらず、当面は養豚産業が内需型産業
にあることなどから、決して安易な増頭はせず、無分別な増頭による供給過剰で
豚価の急落を招くことのないよう、前々回および前回調査時に引き続き警告して
いる。

 なお、農業委員会によると、今年下半期の肉豚供給可能頭数は約497万頭で、
このうち第3四半期が約249万頭、第4四半期が約248万頭と予測されている。

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