米国、先渡し契約に基づく生乳取引を試行


2004年末までの試験的事業

 米農務省(USDA)は7月17日、「酪農先渡し価格パイロット・プログラム」の
最終規則を公表した。これは、昨年11月に可決した連邦ミルク・マーケティング
・オーダー(FMMO)制度の修正法を含む2000年度包括統合予算法に基づき実施
される試験的事業であり、本年8月1日から2004年12月末までの取引が対象となっ
ている。


加工原料乳価を当事者間で自由設定

 本事業は、FMMO制度におけるクラスU(ソフト乳製品向け)、クラスV(チ
ーズ向け)およびクラスW(バター、脱脂粉乳等向け)の、いわゆる加工原料乳
について、先渡し契約(forward contract)による取引を可能とするものであ
る。この場合の先渡し契約とは、生産者(酪農家または酪農協)と乳業者とが、
加工原料乳を、将来における特定の期間内に、特定の条件(取引価格など)の下
で売買することについて、あらかじめ約束するということを意味する。

 最終規則によると、取引価格は、FMMO制度に基づく用途別の最低取引価格に
よらず、当事者間の合意によって自由に設定することができ、また、生産者にお
ける先渡し契約への参加は、乳業者によって強要されることなく、あくまでも任
意であるとされている。

 このため、乳業者は、こうした前提の下で契約を取り交わしたとの生産者の意
思表明がなされた書面(Disclosure Statement)を、最初に取引が行われる際、
契約書の写しとともに各マーケティング・オーダー管理官に提出しなければなら
ない。これを基に管理官は、契約が有効なものであるかどうかを確認し、必要に
応じて、適切な改善策を講じることとされている。

 また、先渡し契約に基づく取引数量が、実際に乳業者によって加工用に仕向け
られた生乳の数量よりも多かった場合、その超過契約分の取引価格は、FMMO制
度に基づく最低取引価格か、契約に基づく取引価格のいずれか高い方とすること
が規定されている。

 さらに、乳業者においては、毎月管理官に対し、生産者からの生乳の受け入れ、
用途別の利用および乳価の支払いに関する報告を行わなければならないなどの
FMMO制度の一般規定が、先渡し契約に基づく取引についても適用されることと
されている。


関係者は第2のリスク管理対策として注目

 本事業は、96年農業法に基づき、加工原料乳価格支持制度の段階的廃止に伴う
乳価の低落に対処するために導入された、生乳のオプション取引に関する酪農オ
プション・パイロット・プログラムに次ぐ酪農のリスク管理対策の1つとして、
関係者の大きな注目を集めている。

 USDAは、本事業が生乳の価格形成にどのような影響を与えるのかについて調
査し、2002年4月末までに議会に報告することとされている。なお、現行の
FMMO制度に参加する酪農家約7万2千戸(今年1月現在)のうち、約8千戸
が先渡し契約を結ぶものと見込まれている。

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