米環境保護庁、TMDLプログラムの最終規則を公布


水域への汚染物質の排出を規制

 米環境保護庁(EPA)は、国内の水質を改善するため、いわゆる「1日当たり
総合最大許容負荷量(total maximum daily load:TMDL)プログラム」の最終
規則を7月13日付け官報で公布した。

 EPAのブラウナー長官は、当該プログラムを米国の水質汚染に対処する上で、
最も重要な施策の1つとした上、今後、州ベース、あるいは水域ベースで包括的
に水質改善に取り組むことができるようになるとコメントした。

 EPAによれば、米国の2万ヵ所以上の水域が汚染されており、国民の大多数がこ
れらの汚染水域の10マイル(約16キロ)以内に居住しているとされる。今回の最
終規則は、これらの水質の改善を図り、河川、湖沼、海岸などを水泳、釣り、魚
介類の生息のために安全なものとすることを目標の1つとしている。


非点源汚染源にも順守を義務付け

 河川などの水域への汚染物質の排出量を規制するTMDLプログラムでは、州政
府などが@それぞれの水域を調査し、汚染されたすべての水域についてより包括
的なリストを作成すること、A汚染された水域を10年以内(必要があれば5年の
延長が可能)に清浄化するスケジュールを策定することが定められている。

 また、それぞれの水域について、@汚染物質、A水質基準、Bその基準を満た
すために許容される(削減すべき)汚染物質数量、C点源および非点源汚染源
(point and non-point sources)ごとの排出許容割当量を設定することや、
これらの実施計画を策定することなども盛り込まれている。


反発する農業サイド、実施は難航も

 今回の最終規則は99年8月に提案されたもので、3万4千件にも及ぶコメント
が寄せられるなど、各方面から高い関心を集めた。中でも農業は、従来、大規模
畜産経営体などを除き、非点源汚染源として水質保全法の関連法令の直接的な規
制対象外であったことから、今回の規則には強く反対してきた。生産者からは、
大雨時の表土流出はどうなるのかといった疑問やコスト増への懸念も示されてい
る。米国最大の農業団体であるファーム・ビューローのストールマン会長は、新
たな規制による生産者の負担増に懸念を示したほか、現行の地方単位で行われて
いるプログラムが機能し、水質改善に寄与しているにもかかわらず、これらのプ
ログラムと相反する部分を有する新規制の導入により、こうした努力が寸断され
ることなどから、結果的に水質改善は遅れることになるだろうと述べた。

 当該規則によって生じる追加費用について、EPAは年間1億ドル(約109億円:
1ドル=約109円)以下と推計しているが、反対派からは年間20億ドル(約2,180
億円)に上るとの説も出されている。

 本規則の施行日は、議会がEPAに施行を許可した日から30日を超えた日以降と
規定されているが、クリントン大統領の署名が確実視されていた軍事関係歳出法
案にTMDLプログラム施行のための支出を2001年度(2001年9月30日に終了)まで
禁止する条項が付加され、これが成立したことから、同プログラムは、2001年10
月1日まで発効しないこととなった。さらに、農業団体のほか、全米州知事協会、
超党派の国会議員なども強く反対していることから、実施に向けては難航も予想
されている。

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