タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○EU向け輸出問題の早期解決による市場回復を期待


● ● ● 8月の卸売価格、農家販売価格ともに大幅下落 ● ● ●

 ブロイラーの生産量は、今年3月末に発生したタイ産鶏肉への抗菌剤残留問
題の影響により、減少傾向が続いており、7月の生産(出荷)羽数は、前年同
期を約5%下回る7,920万羽となった。ひなのふ化羽数も5月以降、前年を3〜5
%下回る状況が続いていることから、ブロイラー生産量が、今年中に前年の水
準にまで回復するとは考えがたい。

 生産量は減少しているものの、EU向けの荷動きが鈍っていることから、国内
市場への供給量が大きく減少していないことや、国内の経済が伸び悩んでいる
ことが影響して、8月のバンコク市場のブロイラー卸売価格は、過去3年間で最
低の水準であり、前月を約15%下回る生体重1キログラム当り22バーツ(約64
円:1バーツ=2.9円)にまで急落している。農家の販売価格についても、前月
を約12%下回っている。農家の販売価格は、今年4月以降、ブロイラーの平均
生産費を下回って推移しており、ブロイラー生産の2サイクル分以上に相当す
る、5ヵ月間にわたって農家にとって極めて厳しい状況が続いている。


● ● ● 薬剤残留問題、解決に向かう ● ● ●

 タイの鶏肉輸出業者を悩ませている抗菌剤の残留問題をめぐっては、タイ政
府もいら立ちを強めており、10月中旬には、EUのタイ産鶏肉に対する毎個検査
への対抗措置として、EUからタイ向けに輸出される農産物や食品類に対して、
タイ政府も毎個検査を行うことを示唆している。

 このような政治的な駆け引きが行われている一方、実務的には、農業協同組
合省畜産開発局(DLD)が、農家段階での検査体制を確立し、輸出品のサンプ
ル検査も強化することで対応を進めている。DLDは10月1日以降、同局が検査・
認定した標準農家(Standard Farm)で生産された鶏肉のみを輸出対象として
認めている。一方、実際の輸出に当たっては、今回の問題への対策として、急
きょ、バンコク近郊のパツンタニ県に設立された中央分析所でのサンプル検査
による衛生検査証明書の添付が必要とされている。

 DLDによる標準農家の検査・認定作業は、4月と9月の年2回と定められており、
10月1日現在、標準農家として認定されているブロイラー生産農家は4,822戸あ
り、検査により改善指導を受けているものが3,404戸ある。DLDは、輸出需要を
最大でも年間6億羽と見込んでおり、これを生産するのに必要な標準農家戸数
を8千戸と見込んでいる。したがって、改善指導中の農家の大半が認定される
ことになれば、当面の輸出体制は確立されることになる。

 EUの鶏肉輸入では、それぞれブラジル産6割、タイ産3割程度のシェア構成と
なっているが、ブラジル産鶏肉に対して15.4%の関税と1トン当り1,024ユーロ
の関税相当量が課せられることになったため、ブラジルは輸出の大幅な減少を
危惧している。タイ側は、品質問題の解決とブラジル産鶏肉の落ち込みによる、
EU市場でのシェア拡大に大きな期待を寄せている。

◇図:農家販売価格の推移◇

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