EU、旅行者による畜産物の持ち込み等に関する規則を強化


欧州議会の臨時委員会等、現行法令下でのFMD進入の危険性を指摘

 EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会(SCFCAH)は先般、食肉・食肉製
品および乳製品の旅行者による持ち込み等に関する規則を強化するとしたEU委
員会の提案を採択した。

 イギリスでは2001年2月、口蹄疫(FMD)の発生が確認された後、9月末の終
息まで7ヵ月にわたりFMDが猛威を振るった。また、同年3月にはフランス、オ
ランダ、アイルランドにも飛び火し、EU各国がFMDの防疫・予防対策に追われ
たのも記憶に新しい。

 その後、欧州議会のFMD臨時委員会、ブラッセルで開催されたFMDの防疫・予
防に関する国際会議や国際食料農業基金(FAO)のFMD防疫欧州委員会などにお
いて、不正輸入や旅行者によって持ち込まれる畜産物を介してFMDが進入する
危険性が指摘され、その改善が勧告されていた。

 現行のEU法令では、域外からの旅行者が個人消費用として、携行または荷
物内に所持する畜産物に関して、当該製品に対する公的な衛生証明書がない場
合でも、例外措置として輸入(EU内への持ち込み)が認められている。


個人的な持ち込みにも衛生証明書等による輸入申告が必要に

 欧州議会などの勧告を受けて、EU委員会は、この例外措置の停止を食肉安
全性などに関するEU法令を審議するEU委員会内の法制委員会であるSCFCAHに提
案していた。同提案は、SCFCAHでの採択を受けて、今後、EU委員会によって最
終的な規則化が図られ、EU官報に公告された後、2003年から適用される見込み
である。

 ただし、乳児用粉ミルク、ベビー食品は、引き続き持ち込みが認められる。
医療用の特定食品については、@冷蔵保管が必要でないこと、A特許ブランド
製品であること、B包装が破損していないことなどの条件を満たす場合に持ち
込みが認められる。

 なお、グリーンランド、アイスランド、サンマリノ、リヒテンシュタイン、
スイスおよびEU加盟候補国(トルコを除く)などからの旅行者が持ち込む製品
には新たな規則は適用されない。

 その他の食肉・食肉製品および乳製品の個人的な持ち込みに関しては、商業
的輸入と同様に、衛生証明書などの必要書類を添えて輸入申告することが求め
られる。


規則の強化と同時に旅行者への周知を図ることが重要

 EU委員会のバーン委員(保健・消費者保護担当)は、「深刻な家畜疾病のま
ん延を引き起こす可能性のある輸入畜産物に対して、我々の防御を強化する賢
明な対策である。FMDによる危機がいまだに鮮明な記憶として残り、また、豚
コレラの問題が現在継続している中にあって、家畜疾病の発生を防ぐため、必
要とされるすべての予防策を実施することは妥当なことである」として、今回
の規則強化に対して理解を求めた。

 また、「規則の強化はコインの片面に過ぎない。新たな規則に関して、EUや
EU加盟候補国に入国する旅行者への周知を図ることが同様に重要である」とし
て、関係者への周知徹底の重要性を強調した。

 今後、新たな規則を旅行者に知らせるためのキャンペーンが実施されるが、
キャンペーンの一環として、EUの公用語やEU加盟候補国の言語だけでなく、ア
ラビア語、スワヒリ語、ロシア語、中国語、日本語などのポスターが作製され
る予定である。

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