韓国向け牛肉と生体牛の輸出をめぐる近況


韓国で豪州産牛肉の地位確立のための販売促進キャンペーンを実施

 豪州の肉牛・牛肉産業においては、国内的には、干ばつの影響から肉牛価格
が下落し、輸出面では、全体としては前年水準を下回って推移しているため、
生産、輸出とも必ずしも好調とは言えない状況が続いている。こうした中、韓
国向けについては、牛肉輸出に一層の弾みをつける販売促進活動や生体牛の輸
出再開など、積極的な取り組みが行われている。

 まず、牛肉輸出に関しては、9月の対韓輸出量が前年同月比較93%増と大幅
な伸びとなる中、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は日本で開催した「オー
ジー・ビーフ・フォーラム」に引き続き、韓国においても、豪州産牛肉の販売
促進キャンペーンを開始した。

 これは、韓国において地方部も含めた初めての本格的な消費者向け宣伝キャ
ンペーンで、同国の家庭における主要な購買者である主婦層をターゲットに、
主婦に人気がある女性パーソナリティーをキャンペーンに起用し、新聞や雑誌、
店頭での販売促進活動を行うものである。
韓国での豪州産牛肉の消費者向け宣伝ポスター

自由化後の韓国市場に高まる期待

 MLAでは、このキャンペーンを、韓国市場において豪州産牛肉の地位を確
立するための長期戦略の一環としている。韓国は昨年、牛肉輸入を自由化した
ばかりで、今後の成長が見込まれる輸出市場である。豪州牛肉業界は、3年以
内に韓国向け輸出により年間8千万〜1億豪ドル(56〜70億円:1豪ドル=70円)
もの追加的な収入を得る可能性があると期待している。

 MLAは、輸入自由化を、特に価値の高いチルドビーフの売り上げを増やす
重要な機会ととらえており、今回の販売促進活動の焦点もそこにあるとしてい
る。MLAによれば、韓国向けチルドビーフの輸出量は、2000年の762トンから20
02年の前半だけで2,100トンを超える水準まで増加している。


韓国向け生体牛輸出が再開へ

 一方、韓国向け生体牛輸出が試行ではあるものの再開された。同国の生産者
による激しい抗議行動や、韓国側から豪州産輸入生体牛にブルータングの感染
が指摘されたことにより、昨年6月から輸出停止措置がとられていたが、アン
ガス種の去勢牛536頭が10月5日、同国に到着し無事に陸揚げされた。なお、こ
れらの牛の生体重は400キログラムで、と畜体重に達するまで韓国で肥育され
る予定となっている。

 今回は、豪州からの生体牛輸出の本格的再開に向けた3回の試行のうち最初
のものであり、さらに2隻分の出荷が予定されている。生体家畜輸出業者団体
であるライブ・コープによれば、今回の生体牛輸出の再開は、両国の政府と業
界の間の徹底的な協議の成果によるものとしている。

 その協議の結果、豪州においてブルータング清浄地域における船積み前の検
疫を実施するとともに、韓国において農場に導入される前に、15日の隔離期間
を設けるという新たな基準が導入されるなど検疫条件が強化された。ただし、
ライブ・コープでは、本格的に輸出が再開されても、韓国での隔離施設能力の
制約のため、輸出可能な頭数は、年間8,500頭程度とみている。


中東向け生体羊、中国向け生体牛も輸出再開

 なお、韓国向け生体牛と同様、中東向け生体羊および中国向け生体牛の輸出
も再開された。中東向け生体羊輸出については、既報(本誌9月号トピックス
参照)の中東向け生体牛輸出停止に引き続き、相次ぐ生体羊の大量死亡事故の
発生を受け、10月1日には生体羊輸出についても、積出港などの限定により、
部分的な暫定停止措置が実施された。その後連邦政府は10月31日、今後の事故
防止のための規制を強化し、中東向け生体羊を再開することを発表した。強化
された内容は、出荷便ごとの詳細な危険性に関する事前評価の提出、船上での
飼養施設の改善などである。

 また、中国向け生体牛輸出については、豪州の中国向け生体牛輸出業者が10
月初め、検疫上問題のあった生体牛を検疫当局の指示に従わず輸出しようとし
たことが発端となり、中国側から暫定的に生体牛輸入を停止されていた。しか
し、中国政府は10月22日、豪州の輸出検疫手続きが改定されたことにより、同
国からの生体牛の輸入停止措置を解除した。豪州検疫検査局(AQIS)によると、
今回の改正は、これまで出荷30日前に実施されていた検査に加え、出荷10日前
にも検査を義務付けるという内容のものである。

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