中国の酪農における生産動向について


 米農務省海外農業局(USDA/FAS)は先ごろ、中国における酪農の状況に関
する報告書を発表した。そのうち、生産の概要は次の通りである。


2001年の生乳生産量、消費の伸びなどを背景として、大幅に増加

 2001年の中国の生乳生産量(牛由来のもの。以下同じ)は、特に都市部
を中心に、経済成長に伴う所得の増加などにより、牛乳・乳製品の消費が大幅
に伸びていることを背景に、前年を23.9%上回る1,025万5千トンとなった。20
01年の都市部における牛乳(Fresh Milk)の1人当たり消費量については、前
年比19.7%増の11.9キログラムであった。


黒龍江省が全体の2割強を占める最大の生産地

 中国の酪農は、北部や北京、上海などの大都市周辺が主要な生産地域となっ
ている。最大の生乳生産地域は黒龍江省で、2001年は前年比22.5%増の192万
4千トン、全体に占めるシェアも前年から4.2ポイント増加して22.8%となった。
これに北京に隣接する河北省が続き、2001年は前年比27.6%増の107万4千トン
となっている。また、シェアについては、前年から2.8ポイント増の13.0%と
なった。なお、最近では、四川省、新疆地区をはじめとする西部諸地域におい
ても、急成長が伝えられているが、この背景には中国政府がこれらの地域で酪
農の振興を図っていることが挙げられる。


2002、2003年も増加の予想 −遺伝形質の向上に課題も

 2002年および2003年の生乳生産量については、堅調な需要が続くと見込まれ
ることから、それぞれ8.0%の増加が予想されている。一方、中国では、粗飼
料や水の不足といったことに加えて、ホルスタインなどのいわゆる純粋な乳用
種の占める割合が、乳用牛群の半数以下に過ぎず(それ以外は、中国の在来種
である黄牛との交雑種など)、遺伝形質の向上が生産拡大の上で大きな問題と
なっている。酪農は、中国の第10次5カ年計画において重点課題の1つに掲げら
れており、中国政府は、最近では、受精卵移植を活用した乳牛の改良事業
(「1万個の受精卵プロジェクト」と呼ばれる)を実施している。

中国の生乳生産量

資料:米農務省海外農業局(USDA/FAS)
 注:2002年および2003年は予測値


乳業工場数は1,500にまで増加、ただし規模に問題

 牛乳・乳製品の消費拡大に伴い乳業工場数は、現在1,500に達している。しか
し、1日当たりの処理乳量については、比較的小規模となっており、約55%の工
場は20トン以下で、1,000トンを超える工場は5%に過ぎない。一方、中国の乳
業市場には、その収益性の魅力から、外資系企業の投資も増えており、2001年
には、企業数がそれまでの45社から51社へと増加した。

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