米国で定着化した銘柄牛肉、サーティファイド・アンガス・ビーフ


USDAによる認定銘柄は、牛肉30ブランド、豚肉4ブランド

 米農務省(USDA)は、食肉(牛・豚・鶏)や鶏卵、乳製品などの格付け業務
に加えて、日本で言うところの銘柄牛肉・豚肉の認定プログラムも実施してい
る。現在、USDAの認定銘柄としては、大きく分けて、牛肉で30ブランド、豚肉
で4ブランドが存在する。これらには、品種名(例:サーティファイド・ヘレ
フォード・ビーフ)のほか、パッカーやスーパーなどの特定の企業名を冠した
ブランド(例:ウォルマート・アンガス・ビーフ)もあり、USDAという政府機
関が、公正な「ものさし」の提供という意味ではあるにせよ、こうした企業の
商業的な販売戦略にも一役買っているという実態は、とても興味深い。

 その中でも、種畜登録団体のアメリカン・アンガス協会による創設から25
年を迎える「サーティファイド・アンガス・ビーフ(CAB)」は、比較的脂肪
交雑の多い高品質牛肉として、国内で最も定着しているブランドであると言え
る。


CABの認定基準

 CABの認定は、USDAの格付員が、と畜時の生体牛の外観と枝肉の品質に関す
る基準に基づいて実施する。その基準とは、まず、生体時において、毛色の5
1%以上が黒色の去勢牛または未経産牛であることが確認され、また、枝肉の
段階では、@脂肪交雑が7段階評価の上から3つ目以上(「やや多い」、「適度」、
「並」)で、成熟度(5段階評価)が最も上の「A」であること(格付の肉質等
級では「プライム」と「チョイス」の一部が該当)、A脂肪交雑に「標準」以
上のきめ細かさがあること、B歩留まり等級(上から1〜5)が1〜3の範囲内で
あること(過度な脂肪が付着していない)などの条件に合致することである。


CAB認定頭数は、全米と畜頭数の約6%

 アメリカン・アンガス協会が先ごろ公表したデータによれば、2002年度(20
01年10月〜2002年9月)においては、生体時の基準を満たした個体1,200万頭
(同期間中の全米の総と畜頭数約3,567万頭の約34%、総格付頭数約2,757万頭
の中の約45%)超のうち、210万頭(それぞれ同約6%、同約8%)が最終的に
CABとして認定され、牛肉の数量としては5億4千万ポンド(約24万トン)と、3
年連続で5億ポンドを超えている。全米の生産量からすると、まだわずかなシ
ェアに過ぎないが、10年前に比べるとおよそ6倍の規模にまで成長している。2
002年度における認定数量の仕向け先別の割合は、小売向けが約54%、フード
サービス(レストランなど)向けが約31%、輸出向けが約13%であり、また、
加工が施されたいわゆる付加価値製品は、1,200万ポンド(約5,400トン)と、
前年度比25%増という大幅な伸びを示しているのが特徴である。


供給チェーンを通じたライセンス・プログラムを展開

 現在、全米には、CABブランドの表示ができる販売ライセンスを持った小
売店が3,000店以上、同レストランが約3,400店以上(これ以外にライセンスを
持たないためCABブランドの表示はできないがCABを利用しているレストランは
約35,000店)あるとされ、また、海外へは日本を含む45の国と地域に輸出され
ている。一方、農家段階でも、99年からCABを生産するフィードロットのライ
センス・プログラムがスタートし、現在、全米70ヵ所にライセンスが与えられ
ている。

 米国の小売段階においては、店内でのカット、包装が主体の高級銘柄牛肉・
CABは、近年伸びが著しい低価格商品主体のケースレディ・ミートの対極的な
商品としても、今後も重要なポジションをキープしていくものと考えられる。

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