米食肉業界団体、学校給食用に放射線照射牛ひき肉
を買い上げるパイロットプログラムの導入を要請


2000年2月には食肉全般に対する病原菌抑制などを目的とした放射線照射を承認

 米国食肉加工業者の団体である米国食肉協会(AMI)は10月24日、年次総会
において、米農務省(USDA)食品消費者局(FCS)に対し、同局が行う学校給
食プログラム向けに放射線照射牛ひき肉の買い上げを実施するパイロット・プ
ログラムの導入を求める決議を採択したと発表した。この結果を受けてAMIは、
USDAに対し要請書を提出することとしている。

 食品への放射線照射は、食中毒の原因となる病原菌の抑制やシェルフライフ
の延長などが期待されることから、米保健社会福祉省(HHS)食品医薬品局(F
DA)は、63年の小麦粉を皮切りに翌年にジャガイモ、86年には果実、野菜、ハ
ーブおよび香辛料への放射線照射を承認している。食肉においても86年に豚肉
が、92年には家きん肉が承認され、2000年2月には食肉全般に対し放射線照射
が認められた。また、米航空宇宙局では70年代から宇宙食(食肉)への放射線
照射を認めている。なお、FDAは、規則の中で放射線照射を行った食品には、
ラベルに「Treated with radiationまたはTreated by irradiation(放射線照
射処理済み)」と表示するよう義務付けている。


食肉加工会社による製品の自主回収が相次ぐ中での今回の要請

 学校給食プログラムは、FCSが行う食料・栄養プログラムの一環として46年
から行われており、現在、約2,500万人以上の児童・生徒が対象となっている。
2001年に同プログラムに要した額は64億ドル(約7,872億円:1ドル=約123円)
と90年の34億ドル(4,182億円)に比べて約2倍となっており、対象人数も90年
に比べ140万人多くなっている。FCSは、USDAとHHSが5年ごとに策定する食生活
ガイドラインに沿って献立を作っており、例えば、ひき肉においては、100%
ビーフであって脂肪含有率が16%以下のものなどと購入する際の規格を示して
いる。なお、これまで放射線照射処理を行ったひき肉の買い上げは行われてい
なかった。

 今年に入り、7月にはコナグラ社(本社:ネブラスカ州)が腸管出血性大腸
菌O157に汚染された疑いのある牛ひき肉など約9千トン、10月にはピルグリム
ス・プライド社(本社:テキサス州)がリステリア菌に汚染された疑いのある
家きん製品約1万3千トンを自主回収しており、それぞれ過去3番目、過去最大
の回収量となっている。こうしたことから、食肉加工業界にとって、製造過程
における食中毒などにつながる病原菌の低減が最大の懸案事項であり、今回の
AMIの決議もこのことが引き金となっているものと思われる。


これまでのところUSDAは見解を示さず

 AMIの決議の翌日、USDAの広報官が新聞記者からのAMIの要請に関する質問に
対し、前向きともとれる発言を行ったことから、一部の報道機関が年内にも同
プログラムを実施と報道した。このため、週明けのナスダック株式市場におい
て、関連銘柄の株価が上昇した。なお、現時点において、USDAからの発表はな
い。

 これまでも食品の放射線照射による病原菌抑制の有効性は認められてきてい
るところであるが、約2,500万人の児童・生徒を対象とした同プログラムへの
導入ということになれば、これまで食品の放射線照射に反対の立場を表明して
いた消費者団体などに加え児童・生徒の親の反応も予想される。

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