畜産廃棄物等に対する加盟国による補助を見直し ● E U


補助見直しの背景には、公正な競争のわい曲につながる可能性が指摘

 EU委員会は2002年11月27日、と畜場からの廃棄物や農場での死亡牛の廃棄処
分、伝達性海綿状脳症(TSE)検査に対する加盟国による補助についての新た
なガイドラインを採択した。

 EU委員会のフィシュラー委員(農業、漁業、農村開発担当)は、「牛海綿状
脳症(BSE)に関するEU規則は、と畜場からの廃棄物の経済的価値を著しく変
化させた。かつては、価値のあったものが、現在は高いコストをかけて処分さ
れる廃棄物となっている。こうした中、食肉業界を(新たな経営環境に)適応
させるため、加盟国による大きな規模の補助が認められてきた。しかし、これ
は公正な競争のわい曲につながる可能性がある。ある加盟国では多額の補助が
行われる一方で、補助を行わない加盟国もある。したがって、政策の見直しは
必要不可欠であった」と述べている。


ガイドラインの概要について

 EU委員会のプレスリリースによると、ガイドラインの概要は以下の通りであ
る。なお、今回採択されたガイドラインの全文は、EU官報に掲載されている。

【と畜場からの廃棄物】

 将来的には、と畜場から出される廃棄物の廃棄処分に係る経費について、加
盟国による補助は認めない。例外措置として、2003年に限り、特定危険部位
(SRM)の廃棄処分に要する経費の50%および商業的用途のない肉骨粉(MBM)
の廃棄処分に要する経費の100%を補助することができる。
―これまでは、SRMの廃棄処分に要する経費の100%までの補助が認められてい
た。しかし、EU委員会では、こうした加盟国による補助は、公正な競争のわい
曲につながる可能性があり、廃止すべきであるとしている。

【死亡牛】

 農場での死亡牛の回収・輸送に要する経費の100%および廃棄処分(保管か
ら最終廃棄まで)に要する経費の75%を補助することができる。また、食肉業
界からの課徴金等が補助財源となる場合には、廃棄処分に要する経費の100%
を補助することができる。
―今回初めて、死亡牛の回収・廃棄処分に対する加盟国による補助について明
確化された。このため、現行の補助制度との調整を図るため、2003年末までは、
廃棄処分に要する経費の100%までの補助が認められる。また、家畜取引業者
およびと畜場の段階での死亡牛の廃棄処分に対する補助が禁止された。この措
置により、輸送中またはと畜場内での牛の取り扱いの改善につながるものと期
待されている。

【TSE検査】

 食用に向けられる健康な牛のBSE検査に関しては、公的補助(EU+加盟国)
の上限を1検査当たり40ユーロ(約5,080円:1ユーロ=127円)とする。この上
限は、BSE検査の総経費(検査キットの購入、BSE検査の実施、サンプルの採取
・輸送・保管・廃棄)を基に設定された。なお、2002年までは1検体当たり15
ユーロ(約1,905円)、2003年は10.5ユーロ(約1,333円)がEUから補助される。

 その他のTSE検査(死亡牛、羊など)に関しては、100%の補助が認められる。
―食用に向けられる健康な牛のBSE検査に関して、これまでは公的補助の上限
が設定されていなかった。

 なお、このガイドラインは、2003年1月1日から適用される。

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