好調を維持するブラジルの牛肉輸出


1〜10月の牛肉輸出量は前年同期比14.5%増

 ブラジル開発商工省貿易局によると、2002年1〜10月における同国の牛肉輸
出量(製品重量ベース。冷蔵肉、冷凍肉、および加工肉など)は、前年同期比
14.5%増の46万6千トン、同輸出額(FOBベース)は5.8%増の8億8,440万ドル
(約1,070億1千万円:1ドル=約121円)となった。

 中でも、生鮮肉(冷蔵、冷凍)の輸出量は、前年同期比13.0%増の33万3千
トンで全輸出量の約7割を占めるが、これを国別で見ると、最大の輸出先であ
るチリは29.3%増の5万7千トンとなった。この要因としては、チリが、アルゼ
ンチンでの口蹄疫発生で2001年3月以降、同国産牛肉の輸入を停止したため、
主要な供給元がシフトしたことなどが挙げられる。チリに次ぐ輸出先としては、
サウジアラビアが約2.1倍の3万7千トン、エジプトが10.3%減の3万1千トン、
オランダが23.8%増の3万トン、ロシアが約19.3倍の2万7千トンとなった。


生産量の増加に加え、為替や低コストにより輸出は増加

 また、米農務省が発表したブラジルの牛肉需給動向(枝肉重量ベース)によ
ると、同国の牛肉生産量は、97年以降一貫して増加し、2001年は前年比5.8%
増、同年の輸出量は52.0%増と著しく増加した。また、2002年の生産量は、前
年比3.5%増の713万6千トン、2003年は738万5千トンに達すると見込まれてい
る。こうした増加に伴い、輸出量も増加が見込まれ、2002年は12.0%増の83万
8千トン、2003年は10.4%増の92万5千トンと予測されている。ブラジルの牛肉
輸出が好調な背景としては、自国通貨レアルが安値で推移する為替動向、低い
生産コスト、生産能力向上への投資の増加などが挙げられている。また、ブラ
ジルの口蹄疫清浄化に対する信頼性の高まりが、欧州市場におけるシェアの拡
大やエジプト、ロシアなど新規市場への進出を可能にしたとしている。


衛生ステータスの向上や為替により今後の輸出動向に注目

 口蹄疫清浄化の動きとしては、ブラジル農務省が11月27日付けのプレスリリ
ースで、国際獣疫事務局(OIE)が同27日、プラチニデモラエス農相に対し、南
部2州(サンタカタリナとリオグランデドスル)の口蹄疫ワクチン接種清浄地域
としてのステータスの回復を伝えたと発表した。同省によると、これは、リオ
デジャネイロ州ドゥーケデカシアス市で11月25日から開催されたOIEの口蹄疫そ
の他疾病委員会で決定されたものであるとしている。

 南部2州は、98年のOIE総会でワクチン接種清浄地域として認定されたが、ブ
ラジル農務省は同2州のワクチン不接種清浄地域としての認定を目指し、2000年
5月、ワクチン接種の中止に踏み切った。しかし、リオグランデドスル州で同年
8月、口蹄疫が発生したため、南部2州はOIEによるワクチン接種清浄地域のステ
ータスを失っていた。ブラジル農相は、「OIEによる南部2州のワクチン接種清浄
地域としての認定はブラジル産食肉の輸出市場の再開と新規市場の開拓にとって
重要なことである」と述べている。また、同国では、来年5月のOIE総会における
北部ロンドニア州のワクチン接種清浄地域としての認定が期待されている。衛生
ステータスの向上や自国通貨の下落により輸出競争力が高まる中で、引き続きブ
ラジル産牛肉輸出動向が注目される。

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