バリ州の養豚振興を推進    ● インドネシア


豚飼養頭数が4年ぶりに前年を上回る

 インドネシアの豚の飼養頭数は、97年後半に顕在化した経済危機の影響で、
同年の832万頭から大幅な減少が続き、過去5年間で最低となった2000年の飼養
頭数は、97年と比較して34.9%減の536万頭にまで大きく落ち込んだ。しかし、
国際通貨基金(IMF)などの支援で、経済回復へのてこ入れが進みつつあるこ
とから、2001年(速報値)は前年比9.5%増の587万頭と、4年ぶりに前年を上
回っている。

 イスラム教では、豚は不浄な動物と位置付けられており、国民の大部分を占
めるイスラム教徒が豚肉を食することはない。しかし、同国には多くの中国系
住民が移住しており、彼らが最も好む豚肉の消費量は年々増加する傾向にある。
2000年の国民1人当たりの豚肉消費量は0.55キログラムと依然として低い水準
ながらも、前年と比較して19.6%増と大幅に伸びており、豚肉需要の増大傾向
は今後も続くものと思われる。


経済危機で傾いた養豚産業を立て直し

 インドネシアの豚の多くは中国系住民の農場で飼養されているが、経済危機
の影響でこうした養豚企業の多くが廃業に追い込まれたことから、同国は養豚
業の基盤を立て直す必要に迫られている。同国の豚は元来、ヒンドゥー教徒の
多いバリ州(バリ島)やキリスト教徒の多い東ヌサテンガラ州および西カリマ
ンタン州で多く飼養されており、上記の3州で全体の4割近くを占める。その中
でもバリ州は、地理的に同国のほぼ中心部に位置しており、豚の飼養頭数も全
国2位の98万頭と、今後の養豚基地としての役割が期待されている。

 インドネシア農業省畜産総局は近々、豪州および米国の能力の高い繁殖豚30
0頭を同州に導入する予定であり、同時に、バリ州を豚コレラの清浄地域にす
るため、相応の予算措置を講ずるとしている。


一般農家の規模拡大を目指す

 現在、バリ州の一般農家で行われている養豚は数頭規模であるが、同局は、
海外からの繁殖性の高い優れた品種の導入によって、将来は10〜15頭規模に増
加させることが可能であるとしている。また、同島の養豚産業の規模が十分に
拡大した暁には、州都デンパサールにおける豚肉の缶詰製造を産業化し、輸出
産品としての育成を目指したいとしている。

 さらに、バリ州はインドネシアで最も著名な観光地であり、訪問客による豚
肉需要の伸びも期待される。また、首都ジャカルタを擁し、人口の6割が住む
ジャワ島に隣接していることから、養豚基地としての役割は極めて重要なもの
になると思われる。

 なお、スマトラ島北部でも企業養豚が事業として成立しているが、この要因
の1つとして国内需要の増大のほか、地理的に近いシンガポール向けの生体豚
輸出が伸びていることが挙げられる。シンガポール国民の7割は中国系であり、
その食生活に豚肉は欠かせないものであるが、シンガポール政府は90年、環境
問題の悪化を理由に国内での養豚を一切禁止する養豚事業撤退政策を掲げた。
また、99年には隣国マレーシアの豚に深刻なウィルス性脳炎が発生したため、
同年以降はマレーシアからの生体豚および豚肉の輸入も禁止している。従って、
現在、シンガポールへ生体豚を輸出できる近隣国は、インドネシアのみである。
シンガポールは、スマトラ島北部のリアウ州ブラン島を生体豚の輸出エリアと
して認定し、資金を投入するなどインドネシアの養豚産業の育成にも協力して
いる。

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