豚肉価格低迷で輸入肉への批判高まる   ● フィリピン


過去にもまれな大幅下落

 フィリピンでは昨年10月以降、豚生産者団体を中心に、豚肉価格の低迷の原
因は、急増する輸入豚肉や中国などからの不正輸入肉のダンピングとインドか
らの水牛肉の輸入急増による豚肉の相対的需要減によるものであるとして、政
府に対策を求める動きが続いている。

 同国では、一般に、テーブルミートとしては冷蔵・冷凍肉が好まれないため、
本来であれば輸入豚肉の大半は加工用に回され、国産豚肉価格には大きな影響
を及ぼさないはずだが、昨年は輸入豚肉が一般市場にも出回り、大幅な価格低
下が引き起こされている。生産者団体によれば、昨年の豚の生産者価格は、前
年比で20%程度安い生体1キログラム当たり56〜58ペソ(約123〜128円)とな
った。このような大幅下落は、口蹄疫の流行による消費者の不安心理から食肉
需要が落ち込んだ95年に前年比で約30%下落した例があるだけだとしている。


韓国からの輸入が急増

 畜産局によれば、フィリピンの豚肉輸入量は、2001年に3万2,600トンだった
ものが、2002年には1〜9月期に3万5,100トンに達しており、年間では前年比約
44%増の4万6,800トンに達すると見込まれている。国別には、2001年は、韓国
(1万7,200トン)、カナダ(1万480トン)、中国(6,190トン)、アメリカ(3
,920トン)、豪州(2,100トン)となっており、韓国からの輸入量が前年比5倍
増の大幅な伸びとなっている。

 生産者団体は、このような正規の輸入データに含まれない不正輸入分も相当
量に達しているとみており、価格に対する悪影響だけでなく、消費者に対する
健康面でのリスクも大きいとしている。不正輸入の方法は、同一の輸入許可証
を繰り返し使用したり、再輸出を条件に輸入許可を得ながら国内販売するとい
ったものから、梱包の上部にだけ野菜を詰めて野菜として通関するといったも
のまでさまざまだが、生産者団体は、いずれも税関や輸入許可を発給する農務
省の検査体制の強化により防止できるとしている。

 生産者は、最需要期に当たるクリスマス前の価格回復を期待していたが、昨
年は回復が見られず、大幅な増加を示している輸入肉に非難の矛先が集中した。


加工業界は防戦に躍起

 一方、国内で消費される加工用食肉の85%を使用するフィリピン食肉加工業
協会は、生体豚・豚肉価格の低迷は輸入豚肉の増加によるものではなく、周期
的な価格変動やクリスマス前の需要が弱かったことによるものであり、生産者
団体の指摘は不正確であるとしている。同協会は、国内では業者の求める加工
用食肉が安定供給できないため輸入しているのであり、輸入量も2002年のミニ
マムアクセス分の11%に相当するにすぎないとして、輸入肉への非難を回避す
るために懸命である。


新長官の対応に注目集まる

 このような状況に対し、昨年12月1日に着任したロレンツォ新農務長官は、
豚生産者団体のクリスマス集会の場で、トウモロコシなど作物ごとに民間主導
で設立されている開発委員会を豚についても設立し、農務省と密接に連携して、
国内の豚産業の振興に必要な施策を提言・推進していくことを提案した。同長
官は、市場主導の供給体制の支持者として知られているが、昨年末にはセーフ
ガードの対象外となっている生鮮野菜の実行関税率を現行の7%から協定税率
の40%まで引き上げる提案をしており、生産者の7割以上が小規模農家で占め
られている同国の養豚に対してどのような対策を講ずるか、今後の動向が注目
される。

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