中国市場の開拓には若い消費者層の取り込みがカギ


中国の消費者は3層に分類

 米農務省海外農業局(USDA/FAS)が公表したアタッシェレポート「Market 
Development Reports」によれば、中国は20世紀における劇的な歴史の変化に
より、世代間がはっきりと分断されている。消費者として分類すると、1946〜
64年生まれの「National Survivors(NS)・国家的生存者」、1965〜76年生ま
れの「Economic Modernizers(EM)・経済的現代人」と1976年の毛沢東死後
以降に生まれた「Young Achievers(YA)・若き達成者」の3層に分けること
ができるという。NS(46〜64年生まれ)は、良き共産主義者となるため、また、
外国からの侵略に対する国家増強のため、すべてを犠牲にしてきた。こうした
ことから、彼らはトラウマを抱え、保守的で物質主義者ではないとされる。EM
(65〜76年生まれ)は、文化大革命とその後の段階的な改革、開放といった激
動の経験に特徴付けられ、富と安定を高く評価する一方、経済的には保守的な
節約家とされる。EM世代が支出について堅実であるのに対し、YA世代は消費を
娯楽や彼らの生活に本来備わっているものとして受け入れている。彼ら以前の
世代とは対照的に、彼らは前例のない繁栄、将来への不安のない中で育ってい
る上、自分たちの親よりも高い教育を受け、国際的なイベントと接することも
多い。


若い世代にはメディアの影響力が大きい

 都市のこの世代は、例えば、2001年には、都市部の家庭には平均1.2台のカ
ラーテレビがあり、全国で5千660万人という世界第2位のインターネット使用
者数となるなど、グローバルなメディアの浸透により、海外のライフスタイル
や考え方に慣れ親しんでいる。このメディアの「社会化」は、消費者の輸入食
品に対する意識、需要や消費を拡大しており、その傾向は特に子供たちに顕著
である(彼らの多くは、一人っ子政策による一人っ子である)。子供たちが、
両親に連れられていくのが、米国のファストフード店のKFCでありマクドナル
ドなのである。また、彼らが成長し、可処分所得を得るようになると、さらに
洗練された外国料理を試すようになるのである。EM世代が、他人の注目を引く
ために外国料理のレストランを訪れるのに対し、YA世代は、文化やエンターテ
イメントの体験として求めており、こうした彼らの気楽さや積極性が、米国の
生産者にとって、米国製品の市場シェアの獲得や普及させるまたとないチャン
スとなる。


アメリカ農産物貿易事務所は2タイプの販売促進を紹介

 中国のWTO加盟も、米国のサプライヤーにとっては、この若い世代を取り
込むプラス要因となり得る。

 しかし、加盟1年を経過したところで、中国では、貿易過剰となり、特にア
メリカとの貿易が増えていること、また、海外からの投資が殺到しているな
ど、内外との競争から米国サプライヤーにとって今後の見通しは甘くはない。
関税の引き下げや規制緩和などにより、輸入原料を使用し国内生産された高
付加価値製品との競争を強いられている。巨大で複雑な中国において市場シ
ェアや競争力を維持するためには、米国の生産者は、新たに若い国際的な消
費者に照準を絞るべきとされる。

 2000年のセンサスによると、全人口の38.8%を76年以降の生まれが占めて
いる。これらの世代を取り込むために、アメリカ農産物貿易事務所(ATO)
では、2つのタイプの販売促進を支持している。第1は、クリスマスから正月
にかけて、オープンしたばかりの最大級のショッピングモール(the Super 
Brand Mall)におけるプロモーションである。ここでは、モールを娯楽の場
ととらえ、上の階にあるフードパラダイスに食品を展示する一方、地下のス
ーパーマーケットで販売を行う。2つめは、マルチメディアを利用したもの
である。中国で食が最も重視される春節に合わせ、米国産の食品を伝統的な
中国料理へ使用し、テレビの料理番組やレシピ集の出版と同時に小売業者や
レストランへの販売促進を行うことで、彼らの伝統的な祝日を祝う意識を高
めることを狙っている。

 こうしたYA世代に向けたプロモーション活動を、ATOはWTO加盟をきっかけ
とした戦略を精緻するための重要な試金石とみている。

元のページに戻る