特別レポート

アセアン地域の飼料
原料需給の概要

シンガポール駐在員事務所 斎藤 孝宏、木田 秀一郎

 

I はじめに

 一般に、国民所得の向上に伴って食肉消費は 増加するとされているが、東南アジア諸国連合(アセアン)の国々では、経済成長の持続に伴い食肉需要も増加傾向で推移している。増加する食肉需要を満たすためには、必要量を国内で生産するかまたは輸入するかの選択となるが、東南アジア地域における伝統的な食肉の販売形態は、冷蔵庫を使用しないウェットマーケットでの取扱いが主であったため、アセアンではシンガポールなどの一部の経済発展を遂げた国を除いては、飼料原料の増産または輸入の増加によって食肉生産の増加を図り国内需要を満たしてきたと言える。

 このレポートでは、今後も経済発展が予想されるアセアンの中でも、アセアン全体の家きんおよび豚の9割前後を飼養するタイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンおよびベトナムにおける飼料事情を明らかにすることにより、当該地域における食肉生産の背景を飼料原料の需給の観点から概観したい。

 ただし、当地域での家畜の飼養に関しては、小規模農家を中心にバックヤード(庭先)で飼養されるものが多く、この場合のえさは家庭で発生する残さや農業の副産物が中心となっており、数量的な把握はできないので、比較的数値の把握がなされている飼料工業に供される飼料原料を中心に述べることとする。

 なお、以下、特別のことわりのない限り、上記5カ国合計での数値について述べることとする。

 また、各種生産量の国別比較など、数値を統一的に扱う観点から、FAOが公表している数値を使用した。

表1 アセアンの家きんと豚の飼養数(2003年)



II アセアン地域の飼料原料の需給概要

1 経済危機から脱し、2003年経済成長率は4〜7%台

 アセアン10カ国のそれぞれの国は、国土面積、人口、言語や文化などがバラエティーに富んでいるものの、地域全体としては世界の中でも活発に経済活動を行っている地域と言える。ベトナムを除く4カ国は97年に始まったアジア経済危機の影響により、97年と98年に国内総生産(GDP)がマイナス成長を記録するほどの経済の落ち込みを経験したが、その後回復に向かい、2003年のGDPの伸び率は4%台から7%台となっている。中でもベトナムはここ数年7%前後を維持しており、経済の伸びが著しい。

 一方、人口の伸びに関しては、近年、0.8%〜2.1%となっている。中でもマレーシアとフィリピンは2%以上と高く、特にフィリピンは国民の多くがカトリック教徒であり、人口抑制的な政策は採り難い状況で、今後も人口の増加は続くものと考えられる。

5カ国のGDPの伸び率




5カ国の人口増加率


 このように経済並びに人口の増加は安定して推移しており、従って、食肉消費の拡大要因が整っている状況といえる。

 

2 ほぼ自給型の食肉需給構造

 アセアン地域ではさまざまな家畜が飼養されているが、その中でも家きん肉および豚肉の需要が高い。これらの家畜は飼料工業由来の飼料(以下「流通飼料」という。)の大部分を消費すると考えられるので、ここでは飼料消費の多い家きん肉と豚肉の需給状況をみることとする。

 なお、家きんについては、鶏のブロイラー、レイヤーやアヒルなどで行われている一部企業的経営に対しては流通飼料が使用されているが、バックヤードで飼養されているものに対しては、流通飼料の給与はほとんどないとされている。

 また、豚に関しても一部バックヤードで飼養はされているが、その多くは不意の支出に対して現金化が可能な資産としての位置付けがなされ、この場合は比較的流通飼料の給与が多いとされている。

(1)家きん肉−タイの輸出が突出

 表1の家きん羽数の92%はブロイラーなどの鶏であり、生産量は増加傾向にある。2003年の家きん肉の生産量は約440万トンとなっており、タイとインドネシアでの生産が多い。輸入はマレーシアとフィリピンを中心に行われている。タ イではブロイラー産業が発展し、輸出量が突出している。需要は増加傾向で推移し、近年は400万トン台を超えている。需要量を国内生産がカバーする、自給的な需給構造と言える。

主要5カ国合計の家きん肉需要



(2) 豚肉−各国とも自給

 豚肉生産量は増加しており、中でもベトナムの生産の伸びが大きい。99年には約350万トンだったものが2003年には100万トンほど増加して450万トン台になっている。一方輸入量および輸出量とも需要量や生産量に比較して微々たるものとなっている。各国ともほぼ自給していると言える。

 食肉消費の中心となるこれらの家きん肉と豚肉において、自給的な需給構造となっている理由は、食肉での流通がコールドチェーンの未発達によって一般的でないことなどによる。このため、生産地から消費地に向けて生体で輸送され、消費地またはその近郊でと畜されることが多くなる。このようなことから、国内の食肉需要を満たすためには、直接食肉を輸入することが難しいため、食肉生産のための飼料原料を生産または輸入することにより、国内での家畜の飼育を行うことが必要となる。

主要5カ国合計の豚肉需要




3 トウモロコシ、大豆ミールなどを中心とした飼料原料

 飼料原料はトウモロコシなどの穀物や油糧種子の搾りかすなどの副産物、動物性の魚粉や骨粉、添加物であるビタミンやミネラルなど多岐にわたるが、ここでは、その中でも数量的に太宗を占めるトウモロコシ、大豆および大豆ミール、米およびぬかなどの需給を見ることとする。

 なお、参考までにタイの飼料生産者協会がとりまとめた2005年の同国における流通飼料の推定生産に関するデータを見ると、主要な飼料原料としては、数量の大きい順から、トウモロコシ、大豆ミール、破砕米そして魚粉となっている。

表2 2005年飼料原料使用推定値(タイ)


(1)トウモロコシ

 収穫面積の過去5年間の推移を見ると、いったん減少した後、増加に転じている。中でもベ トナムは一貫して増加傾向で推移している。99年の生産量は2千万トン弱であったが、2003年には2千2百万トン台となった。輸入量は年によって増減があるが近年は4百万トン以上を輸入している。輸出はインドネシアとタイを中心に行われているが年によって増減がある。マレーシアも輸出を行っているが、生産基盤が乏しいため、そのほとんどは国内で生産を行わず中継貿易と見られる。国内需要は年によって増減しているが、増加傾向で推移している。中でもインドネシア、マレーシアそしてベトナムで増加している。

主要5カ国合計のトウモロコシ収穫面積



主要5カ国合計のトウモロコシ需要



(2)大豆および大豆ミール

 大豆そのものを直接飼料とすることは少ないが、大豆ミールが飼料原料となるため、大豆の需給状況も示した。

(1)大豆

 収穫面積は減少傾向で推移し、2003年は約90万ヘクタールとなっている。生産量も同様に減少傾向を示し約110万トンに落込み、輸入量は相対的に増加傾向で推移し2003年は380万トン台となっている。また、輸出はほとんどなく、需要はほぼ5百万トンに近い水準で安定している。8割近くを輸入に依存している。

主要5カ国の大豆収穫面積



主要5カ国合計の大豆需要


 
主要5カ国合計の大豆ミール需要


(2)大豆ミール

 2002年までの生産は130〜150万トンとなっており、年によって増減がある。輸入は増加傾向で推移しているが、特にタイとベトナムの輸入が増加している。輸出はマレーシアのほかはあまりない。国内需要は増加し、2002年には7百万トン近くになっている。

(3) 米およびぬかなど

 米のほとんどは人間の食料として消費されるが、一部の破砕米は飼料にも使われる。また、精米の段階で大量の米ぬかが副産物として生産され、(一般にはもみ米重量の15%相当とされる。)搾油を経て、またはそのまま飼料に供される。地域内での麦類の生産はほとんどなく、麦類のフスマなどについては、輸入されるかまたは輸入された麦類から生産される。

(1)米(もみ付き)

 米の収穫面積は3,400万ヘクタール前後で推移する一方、生産量は増加傾向で推移し、2003年には1億3千万トン近くになった。品種の改良やかんがい設備の普及などが寄与しているものと考えられる。輸入は年によって増減し、2003年では約280万トンとなっている。輸出はタイとベトナムを中心に行われ、2003年は1,222万トンで、国内需要は年によって増減し、1億1千万トン前後で推移していたが、2003年はタイとベトナムの需要が増加し、1億2千万トンとなった。一方、飼料需要は国内需要の6%の7百万トン前後で推移し、2002年には740万トンになった。

主要5カ国の米収穫面積



主要5カ国合計の米需要


 

(2)米ぬかフスマなど

 米の精米は消費地またはその近辺で行われることが多く、米ぬかは大都市などを除いては大量に確保することが困難なほか、酸化に弱く、長期の保管に不向きである。また、各種の栄養成分に富むため、そのまま飼料として使用される場合が多く、タイ飼料生産協会のデータでは流通飼料の構成成分から除外されているものの、実際はトウモロコシや大豆ミールの代替品として扱われているとされる。ただし、内国流通が主で、統計などでの把握は困難とされている。

 一方、FAOの統計データ上も生産量は単にBransとして、ぬかもフスマも一緒に扱われているが、その多くは米ぬかであると考えられる。近年の生産量は1,400万トンを超えており、その約半分をインドネシアが占めている。輸出が輸入を上回っており、自給していると言える。

主要5カ国合計の糠類需要




(4) キャッサバ

 生産面積は290万ヘクタール前後で推移している。生産量は2002年までは4千万トン前後で推移していたが、2003年はインドネシア、タイ、ベ トナムで増加したことから、4,400万トン近くとなった。

 輸入はほとんど無く、輸出がタイとベトナムを中心に行われている。国内需要は年々増加しており、2003年には4千万トン近くになっている。飼料原料としてはベトナムでの需要が大きく、タイではほとんどないとされているが、タイではキャッサバを原料にタピオカを生産しており、その副産物をペレット化して飼料原料としているため、分類上の問題と考えられる。ベトナムの飼料仕向けは国内需要の7割を超えている。

主要5カ国のキャッサバ収穫面積



主要5カ国合計のキャッサバ需要




4 飼料原料の輸入−トウモロコシは中国に依存

 以上のように、各国は食肉需要の高まりに対して、飼料原料を生産または輸入することで対応しているが、急激な需要の高まりには、基本的には輸入によって対応せざるを得ず、特にトウモロコシと大豆ミールに関して輸入がなされている。輸入相手国別の数量を見ると、トウモロコシはそのほとんどが中国から輸入されている。大豆および大豆ミールの輸入相手国は、大豆は米国が主となっているが、大豆ミールに関してはアルゼンチン、米国、ブラジルなどと輸入先が分散されている。

主要5カ国の大豆輸入相手国別数量



主要5カ国のトウモロコシの輸入相手国別数量



主要5カ国の大豆ミール輸入相手国別数量



5 各国の飼料事情概況

 これまでは、5カ国をとりまとめて飼料原料を取巻く状況を見てきた。次に、各国の個別の状況を飼料工業とともに概観する。なお、飼料の生産能力と生産量は、畜産以外の水産養殖向けを合計したものである。

(1) インドネシア

 2億人を超える人口は、中国、インド、米国に次いで世界第4位で、首都ジャカルタのあるジャワ島(国土面積の7%)に人口の6割が集中している。イスラム教徒の割合が高いことから(人口の87%)、食肉消費の中心は家きん肉となっている。飼料の生産は同国の飼料協会(GPMT)によれば、2003年には720万トンになったが、鳥インフルエンザの発生したものの、2004年には730万トンになる見込みとのことである。生産される飼料のほとんどは、ブロイラーや採卵用家きんなどの養鶏向けがほとんどである。

 原料のトウモロコシは国内でも生産されるが、供給が収穫期である2月から4月に限定され、他の季節は輸入品に依存せざるを得ない状況となっている。この理由は、生産されたトウモロコシの乾燥設備や保管施設が不十分なため、保存上品質に問題が発生するためである。また、道路などのインフラも不十分なため、輸送上の問題もある。このため、結果的に年間百万トン以上を中国などから輸入している。

 大豆ミールについては、ほとんどを輸入に依存している。輸入相手先は、米国、ブラジル、アルゼンチンなどで、中国中心のトウモロコシの輸入と比較して、多角化している。

 同国の飼料企業の上位10社は(表3)のとおりとなっている。筆頭はタイ資本のチャロンポカパン(CP)インドネシアとなっている。これら10社で同国の企業による飼料生産量の約9割のシェアを占める。

表3 主要飼料企業(インドネシア)


 

(2) マレーシア

 イスラム教を国教としている国であり、食肉消費の中心はインドネシアと同様に家きん肉となっている。豚については、1999年にニパウイルスによる病死者が発生したため、大量の豚が処分されるとともに豚肉消費が減退したが、その後生産は回復基調で推移している。家きん肉需給(参考表3)には反映されていないものの、年間約440万羽の生鳥をシンガポールに輸出している。

 トウモロコシの需要に対する国内生産の割合は2002年でわずか3%となっており、需要のほぼ全量を輸入に依存している。また、大豆の全量を輸入しており、これを原料に大豆ミールが生産されているが、大豆ミールそのものも全て輸入で賄われている。

 同国の飼料企業の上位10社は(表4)のとおりとなっている。飼料関係者によれば、2004年の配合飼料などの生産量は4百万トン強で、その8割強は家きん用で、残りは豚用などとなっている。上位2社は欧米系の企業となっている。これら10社で同国の企業による飼料生産量の約5割のシェアを占めると見込まれる。また、10社中6社がインテグレーターで、社内に畜産または水産養殖部門を有している。

表4 主要飼料企業(マレーシア)



(3) フィリピン

 8千万人を超える人口を有するとともに年率2%の人口増加を続けており、経済の安定が継続すれば、食肉消費も拡大するものと見込まれている。宗教的な制約がなく、アセアンの中ではベトナムに次いで豚の飼養頭数が多い。

 トウモロコシは年間440万トン前後を生産し、9割以上を自給しているものの、収穫後の乾燥、保管および輸送にかかるインフラが十分ではなく、収穫量の1割を超える損失が生じているとされる。主要生産地が北部と南部に分かれているが、北部は台風などの自然災害の影響を受けやす

く、南部は消費地までの輸送経費がかかるという問題を抱えており、需要の一部を輸入する結果となっている。大豆および大豆ミールは全量を輸入に依存している。

 同国の飼料企業の上位10社は(表5)のとおりとなっている。2003年の企業による飼料の生産量は約540万トンとされているが、そのうち約5割を上位の5社が生産しており、いずれもインテグレーターである。

表5 主要飼料企業(フィリピン)



(4) タイ

 アセアン諸国の中で、特に輸出向けブロイラー生産が盛んで2003年までは年間30万トンを超える輸出を行ってきた。トウモロコシの生産量は、国内需要を満たしており、一部は輸出もされている。ただし、生産の中心地である北部地方はしばしば干ばつなどが発生する地域であるため、収穫面積はほぼ横ばいであるが、生産量は減少傾向となっており、2003年には410万トン余りとなっている。大豆は需要の8割以上を輸入しており、大豆ミールも2003年には192万トンを輸入している。2004年に発生した鳥インフルエンザにより同国の家きん肉産業は大きな影響を受け、飼料原料のトウモロコシに余剰が発生し、輸出量の増加につながったとされている。また、同国は米の輸出国であり年間1千万トン前後を輸出してきたが、2003年には840万トンに減少した。米の需要量の約9%が飼料に仕向けられている。キャッサバの収穫面積は約百万ヘクタールとなっており、年間1,600〜1,800万トン生成されているが、統計上同国での飼料への仕向けはほとんど無いとされ、2003年には370万トンが輸出されている。

 同国の飼料企業の上位10社は(表6)のとおりとなっている。飼料関係者による2004年の企業による飼料の生産見込み量は約1千万トンとされているが、そのうち約7割をこれらの上位の10社が生産しており、1社を除いていずれもインテグレーターである。米国資本が2社あるほか全てタイ国資本の会社となっており、中でも第1位のCPグループが大きな生産シェアを誇っている。

表6 主要飼料企業(タイ)


(5) ベトナム

 ここ数年7%前後の高い経済成長率を維持しており、家きん肉および豚肉とも生産と需要双方が増加している。飼料需要の増加を背景にトウモロコシの収穫面積および生産の増加が続いており、需要の9割を自給している。大豆については収穫面積および生産量が増加しているものの、需要の増加によって近年は多少の輸入が発生している。大豆ミールに関してはほぼ全量を輸入に依存している。また、同国はタイと並んで米の輸出国であり、収穫面積も750万ヘクタール前後で推移し2003年には2千7百万トンを超える生産を行っている。その一部を飼料に仕向けているが、需要量の2%ほどに過ぎない。また、キャッサバの収穫面積と生産量は増加しており、2003年には520万トンを生産している。他の国と比較してキャッサバを飼料に仕向ける割合が高く、需要の7割以上を占めている。アセアン諸国の中でも豚の飼養頭数が多く、流通飼料の約5割が養豚向けで、家きん4割、その他が1割となっている。また同国でも鳥インフルエンザが発生し、大量の家きんの殺処分を行っており、2004年の家きん羽数は1割ほど減少する一方で、豚の頭数は5%ほど増加しており、飼料需給に何らかの影響を与えるものと思われる。

 同国の飼料企業の上位10社は(表7)のとおりとなっている。飼料関係者による2004年の企業による飼料の生産見込み量は約5百万トンとされているが、そのうち約5割をこれらの上位の10社が生産しており、5社がインテグレーターであるが、飼料の自社消費割合は他の国と比べて低くなっている。同国資本のほか、外貨はタイ、フランス、米国、台湾、韓国およびインドネシアからの資本投入がありバラエティーに富むが、中でもタイ資本のCPが筆頭となっている。

表7 主要飼料企業(ベトナム)


 

III 終わりに

 経済成長が継続しているアセアン諸国においては、食肉などの畜産物需要も拡大傾向で推移しているが、食肉はコールドチェーンの未整備などの影響により国内生産の拡大によって供給される傾向が強く、文中で述べたとおり結果的に飼料原料の国内生産を拡大するか、または輸入に依存するかを選択することとなる。

 ベトナムのように飼料の国内生産を拡大しつつ輸入も増加させる国もあるが、作物に関して、収穫面積が横ばいまたは減少傾向にある現状においては、今後は改良された品種などの採用により、耕地の単位面積当たりの収穫量を向上させる方向に向かうものと考えられる。

 一方、輸入に関しては、トウモロコシはほとんどが中国からのものとなっている。近年の中国の経済成長はアセアン諸国のそれを上回っており、将来は工業原材料などと同様、従来とは逆に飼料原料の輸入国に転じるものと予想されている。輸入先を変更しようとしても中国の輸入は短期的には国際価格を引き上げる方向に作用し、アセアン側としてはトウモロコシなどを購入しにくくなるものと思われる。また、中国の通貨「元」の切上げや原油価格の高騰など現在の状況は飼料原料輸入がより困難な方向へ向かいつつある。このため、今後のアセアンの飼料原料の確保については、国内生産を志向する傾向が強くなるものと考えられる。

 現在、アセアン各国は個別に域外の国々と経済連携協定(EPA)を推進するほか、域内でアセアン自由貿易地域(AFTA)により域内関税を将来的に撤廃する構想を進めるなど、経済的な連携を強化しつつある。これらの制度的な枠組みが海外からの投資の拡大とメンバー国の経済の一段の活性化が予想される状況を作り出している。

 現状では、インフラが未整備のため、せっかく生産されても効率的な流通がなされない飼料原料も存在している状況であるが、将来的には経済発展に伴うインフラの整備が進み、アセアン域内での飼料原料の輸送の活発化などにより、地域全体としての畜産の発展が期待される。

(参 考)















 


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