生乳価格をめぐる対立が深まるアルゼンチン


乳製品に係る輸出税を引き下げ

 アルゼンチン政府は、乳製品に係る輸出税の引き下げ(粉乳の輸出税を15%から10%、チーズの輸出税を10%から5%に改訂)を定めた経済産業省決議第672/2006号(8月25日付け)を官報に公表した。

 2002年3月に輸出税が設けられた際、乳製品の輸出税は5%であったが、アルゼンチン国内におけるインフレの進行により、乳製品小売価格は上昇した。乳製品の国内供給量を増加させることにより、乳製品小売価格の上昇を抑制するため、政府は2005年7月に乳製品の輸出税を引き上げ(チーズの輸出税を10%、牛乳、粉乳、生クリームなどの輸出税を15%に設定)ていた。

2006年 小売価格の推移

 2006年の月別の乳製品小売価格を見ると、ほぼ安定していることから、政府が目的とした価格上昇の抑制は成功している。

生産者は生乳価格の引き上げを要求

 生乳価格は、91年までは政府が介入していたが、以降は個々の乳業会社が独自の基準により生乳価格を決定している。輸出税の引き上げ以前の生乳価格は1リットル当たり0.60ペソ(41円:1ペソ=68円)であったが、輸出税の引き上げ以降は0.48ペソ(33円)まで低下していると伝えられている。しかしながら、輸出税が引き下げられたことから、乳業会社に対して、酪農経営者は生乳価格の引き上げを強く要求している。サンタフェ乳業生産者機構のソシン会長は「乳業会社は生乳価格を引き下げるが設備投資はやめない。これは生産者に対する挑戦である」、コルドバ乳業生産者会議のトロセーロ会長は「生産者が必要としている生乳価格の再構成は、消費者に転嫁されるべきではない」と発言していると伝えられている。

 一方、乳業会社の関係者は、「金利が上昇する中で負債を減少させる必要があること、また労働者の賃金が上昇していることから、輸出税が引き上げられるまでは収益があったが、現在では異なっている」と発言していると伝えられている。

乳製品輸出は増加

 また、乳製品の輸出状況を見ると、2006年1〜9月において輸出量は前年同期比24.8%増の25万4千トン、輸出額は同29.4%増の5億7,500万ドル(684億円:1ドル=119円)であった。内訳を見ると、粉乳、チーズと比べ、バター、ホエイ、ヨーグルトなどを含むその他の乳製品の輸出の伸びが著しい。

乳製品の輸出量および輸出額


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