アルゼンチン、牛個体識別制度の対象を拡大


2007年1月1日以降に移動する子牛に個体識別を義務化

 現在、アルゼンチンでは輸出用肉用牛について個体識別が行われている(海外駐在員情報通巻第567号参照)ところであり、またすべての牛に対して個体識別を行うことを定めた農牧水産食糧庁(SAGPyA)決議第103/2006号(2006年3月3日付け)が公表されている。SAGPyA決議第103/2006号では、

 (1)2006年に産まれた牛は個体番号付きの耳標により識別され、2007年1月1日から耳標のない子牛の移動は認められないこと

 (2)個体識別制度はアルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)の担当業務であり、SENASAが別途に規則を定めること

 などが定められている。このSAGPyA決議第103/2006号を踏まえ、アルゼンチン政府はSENASA決議第754/2006号(2006年10月31日付け)を公表した。概要は以下のとおりである。

 (1)生産者は、生産者番号の取得手続きを各地のSENASAで行うこと

 (2)子牛の左耳に耳標型、右耳にボタン型の耳標を装着すること

 (3)生産者は個体識別番号などを記録した牛個体識別台帳を作成すること

 (4)SENASAは、生産者番号の取得手続きを行った生産者に対し、予告せずに立ち入り検査を行うことができること


9ケタの耳標を装着

 また、SENASA決議第754/2006号では個体識別について次のように定めている。

 (1)口蹄疫ワクチンを接種した子牛に対しては黄色の耳標、接種していない子牛に対しては緑色の耳標を装着すること

 (2)耳標には9ケタの個体識別番号が印字されていること(上5ケタは個体番号、下4ケタは生産者番号を表す)

 (3)牛個体識別台帳には、生産者と農場に関する情報、個体識別番号、耳標の装着日、耳標の脱落や紛失の情報、性別および品種、経営者の署名およびSENASA職員の署名を記録し、原本はSENASA、写しは生産者が保管すること

 (4)耳標の脱落や紛失があった場合、SENASAは耳標を再発行すること(再発行された耳標は、口蹄疫ワクチンの接種にかかわらず青色となる)


模様眺めの生産者

 アルゼンチン政府は個体識別制度が開始されることにより、家畜疾病の監視、税金の徴収、畜産物生産量の見通しにとって極めて有用であると期待している。

 しかしながら、生産者番号の取得手続きは始まっているものの、あと一月余りでSENASAが十分な体制を整えることができるのか疑問視する畜産関係者も多い。アルゼンチンの肉用子牛は、牧草の生産量が増える9月頃に誕生し、翌年3月頃に離乳し、移動する例が多いため、肉用子牛の移動は例年3月にピークを迎える。このため、新たな政府の対応を見込み、来年3月まで模様眺めの生産者も多いといわれている。


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