酪農生産者団体、乳価の上乗せを要請 ● 豪 州


干ばつによる生産コスト上昇が背景、結果的に乳製品価格の値上げも

 豪州の酪農生産者団体は11月初旬、長引く干ばつが酪農生産に多大な影響を及ぼしているとして、乳業各社に対し、乳価の早期支払いと酪農家のコスト負担上昇に見合う乳価の上乗せを要請した。これは、豪州の生乳生産の65%(2005/06年度実績)を占めるビクトリア(VIC)州、同12%を占めるニューサウスウェールズ(NSW)州の酪農生産者団体が共同で行ったもの。

 すでに大手乳業の一つであるデイリー・ファーマーズをはじめ国内の乳業数社は、生乳生産の確保を前提に一定額の乳価上乗せを表明しており、今回の両団体の要請は、この動きをさらに拡大させたい考え。

 酪農生産に用いられる牧草価格は、干ばつによる収量の大幅な減少から急速に上昇しており、VIC州では、酪農家向けの牧草取引が開始した10月以降、トン当たり80〜100豪ドル(7,440〜9,300円:1豪ドル=93円)もの値上げとなっている。

 VIC州の酪農生産者団体は要請に際し、酪農家に対して乳業が最大の乳価を提示するよう努力を続けているとした上で、乳業存続に当たって酪農家への十分な配慮の必要性を強く訴えた。また、NSW州の酪農生産者団体は、乳価の上乗せは干ばつの影響を多少なりとも緩和させるとしながらも、酪農家は、先行きが見えない中で離農などを考え始めているとして、今後の動向に対する警戒感を強めている。

 一方で、このような乳価の上乗せは、結果として乳製品価格に跳ね返ることから、乳業数社は、すでに製品価格の引き上げを表明しており、価格上昇による消費への影響も懸念され始めている。


GDP成長率は半分に引き下げ、畜産経営は厳しい状況と予想

 今回の干ばつについて、多大な被害をもたらした前回(2002/03年度)時との降雨量を比較すると、7〜9月の合計では前回時を上回っていた。しかし、9月単月で見ると降雨量は全国ベースで過去最低を記録し、また、気温も非常に高かったことから、東部州を中心に干ばつの影響が急速に広まったと言える。

 豪州連邦準備銀行(RBA)は11月9日、同日に発表した月例報告の中で長引く干ばつが農業に与える影響について取り上げており、2006/07年度の農業生産高は、前年比で20%の減少は避けられないとしている。また、この結果、国内総生産(GDP)成長率を半分に引き下げるとみている。畜産部門では、前回の干ばつと比較して、肉牛などの価格はそれほど大きな下落がみられないものの、穀物生産の減少予想で飼料価格が上昇することから、結果的にこれが相殺され、畜産経営は厳しい状況が予想されるとしている。


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