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【ブラッセル駐在員 池田 一樹 11月28日発】 EUにおける牛肉市場の 現状と今後の見通しが、EU委員会の観測部会で報告された。これによると、B SE(牛海綿状脳症)の影響で落ち込んだ消費は、今後わずかな回復が見込まれ ている。しかし、生産量と正味の輸出を含む消費量とのギャップは大きく、大幅 な生産過剰が予測されている。 本年の牛肉生産は、前年比−5%の779万トン、来年は本年並と見込まれて いる。 これに対して消費は、BSEの影響が大きく、本年は前年比−9%の670万 トン、来年は+2%の684万トンと見込まれている。 この結果、生産過剰分は本年110万トン、来年95万トンとなり、これから、 輸出入を勘案した正味の過剰は、本年60万トン、来年40万トンと見込まれて いる。先ごろ、本年および来年の介入買い入れ上限がそれぞれ55万トン、35 万トンと上方修正されたが、過剰見込み数量はこれを上回っている。 枝肉価格は、雄牛(R3)で、本年下半期が前年同期比−12%の2.5ECU /kg、本年通年で前年比−10%の2.6ECU/kg、来年は上半期は−3 %に対して、下半期は回復し+3%、通年で本年と同水準と見込まれている。ま た、乳牛(O3)では本年は前年比−16%の 2.1ECU/kg、来年は本 年と同水準と見込まれている。 国別にみると、BSEの影響が最も大きいイギリスで生産、消費ともEU内で 最大の減少が見込まれており、本年の生産は −31%の69万トン、消費 は−21%の70万トンと見込まれている。生産の大幅な減少は、30カ月齢以 上の牛の処分の結果であり、これまでに90万頭が処分されており、年末までに は120万頭に達する見込みである。来年は回復が見込まれるものの生産(+8. 3%)、消費(+10%)ともに、95年のレベルには及ばないものと見込まれ ている。 ドイツでは、1994年以来牛肉消費は減少してきたが、BSE問題が減少に 拍車をかけ、本年3月末から、消費が前年比−30%〜40%と大きく落ち込ん だ。しかしながら、その後豚肉価格が高値に張り付いているため、回復し、本年 通年では消費量は前年比−11%程度にとどまるものとみられている。ただし、 豚肉価格は今後低下するとみられていることなどから、先行きは厳しく、来年も 2%程度は減少するものとみられている。 EU最大の牛肉消費国のフランスでは、牛肉消費は本年第2四半期から第4四 半期にかけて、−16%、−12%、−6%と回復の傾向を見せており、通年で −9%と見込まれている。来年は5%程度の増加が予測されているが、95年の 消費量には追い付かない状況である。 BSE問題によりかつてない痛手を被っている牛肉市場は、消費の面で今後若 干の回復が予測されている。しかし依然として95年のレベルには遠く、また、 生産減よりも消費減が大きいと予測されていることから、今後の市場安定化長期 的対策が一層重要な課題となっている。
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