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食肉の品質保証へ動き始めた豪州


 【シドニー駐在員 鈴木 稔 11月28日発】 豪州では、安全性に重点を置
いた食肉の品質保証(QA)の動きが活発化しているが、その一方で、肉質のば
らつきから、国内外のユーザー、消費者から確固たる信頼を得られないという問
題に悩まされてきた。このほど、この問題解決に向け、消費者へ「おいしさ」を
保証する食味保証(EQA=Eating Quality Assurance)プログラムが開始され
ることとなった。

 食肉の品質保証と言った場合、広い意味では安全性とともに肉質の保証も含ま
れるが、一般的に肉質の保証手段としては、食肉の格付制度がそれに当たる。

 豪州でもチラー・アセスメントと呼ばれる格付制度があるが、ユーザー、関係
者からは複雑でわかりにくいとの声が多く、また、消費者へ「おいしさ」を保証
するものともなっていない。

 一方、放牧主体という豪州の牛肉産業の宿命として、生産される牛肉の品質が
季節、地域、気候条件などによって非常に差が大きく、さらに近年のフィードロ
ット産業の発達によって、グレインフェッド牛肉も一定のシェアを占めるように
なり、豪州産牛肉の品質格差はさらに大きなものとなってきている。

  このような中で、業界からは、品質に関する、ユーザー、消費者からの信頼を
勝ち得るために、判り易く「おいしさ」の指標となるような格付制度の確立を求
める声が強まりつつあったが、これは豪州食肉産業のかじ取り役である食肉産業
評議会(MIC)が昨年12月に公表した将来戦略の中でも一つの課題として取
り上げられた。   

  先ごろ、この課題の実現に向けて、EQAプログラムが開始されることとなっ
た。このプログラムは今後1年半以内に消費者へ食肉の「おいしさ」を保証する
システムを確立することを目的としている。

  具体的には、食肉研究公社(MRC)の研究成果を基に、消費者向けの新しい
格付システムの制定のみならず、「農場から食卓まで」の食肉の生産、加工、調
理の各段階で、食味を決定する要素を抽出し、適切な管理方法を確立しようとす
るものであるが、その過程を表現する用語として、安全性対策としてのHACC
P(危害分析重要管理点監視方式)ならぬ「PACCP」(食味分析重要管理点
監視方式)なる新造語も使われている。

 本プログラムの推進委員会には、食肉業界代表、MRC、大手スーパーの食肉
担当責任者の他に、既に昨年より独自にグレインフェッド牛肉に関する消費者向
けの格付システムの開発に着手した豪州フィードロット協会からも代表が加わり、
豪州内で統一された形で推進される予定である。

  豪州の食肉産業は安全性の面でのQA体制は進んでいるが、その一方で、おい
しさの面では、前述のような生産形態から信頼性、安定性に欠けるきらいがある。
このEQAが国内外のユーザー、消費者の食肉への信頼感を強め、ひいては消費
回復、輸出拡大につながるものとなるかどうか注目される。

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