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マレーシア、国産鶏肉の安全を宣言


 【シンガポール駐在員 山田 理 11月27日発】 マレーシアでは、8月以
来、主要な畜産物である鶏肉について、残留薬品問題で大きく揺れていた。この
影響で、鶏肉の消費は減少し、価格も前年と比較して低い水準で推移している。
このような中で、先日、マレーシア厚生省は、事実上の国産鶏肉の安全宣言を行
った。この宣言を受けて、問題は収束に向かっている。国内鶏肉生産者にとって
は、2月の需要期を控えて、大きな朗報となった。

  マレーシア厚生大臣は、先日、「国内産の鶏肉は、食用に供するにおいて安全
である。」との発言を行った。これは、最近行われた鶏肉の残留薬物についての
調査結果に基づくもので、事実上、公式な安全宣言とみられる。

  同国において鶏肉は、最も多く消費される畜産物であり、日々の食生活の中で
非常に重要な食品である。また、国内では、1日におよそ百万羽が生産され、国
内需要を賄うほか、約15%が生体でシンガポールに輸出されている。

  今年7月に公表された動物薬品の使用状況調査の中で、国産の鶏肉に高濃度の
薬品(ニトロフラン)が残留していることが明らかにされた。ニトロフランがヒ
トの健康に悪影響をもたらすとの疑いがあることから大きな社会問題となってい
た。

  ニトロフランは、主に豚や鶏の細菌性疾病の予防に用いられるが、鶏肉生産で
飼料に添加して利用した場合、成長促進につながることが知られている。ただし、
マレーシア産鶏肉の主要輸出先であるシンガポールは、ニトロフランの残留を認
めていないことから、輸出向けの鶏肉については厳しい残留検査を実施し、マレ
ーシア国内向けの鶏肉生産においてのみ使用されていた。

  事態を重く見た政府は、関係者を集め、情報収集と事実確認を行った後、8月
には国内向けの鶏肉生産においても、ニトロフランの使用禁止を決定した。違反
したものに対しては、2年以下の懲役もしくは最高5千リンギ(約23万円)の
罰金を課すなど、非常に厳しい対応策を打ち出した。

  しかし、政府の厳しい対応にもかかわらず、9月に実施された同様の調査では、
市中から集められた鶏肉のサンプルのうち、約4割から薬品の残留が認められた。
これは、ニトロフラン添加済み飼料からの切り換えに時間を要したためとみられ
る。

  これらの経過は、連日、新聞などで報道されている。生活水準の向上により、
食品の安全性に対する認識が高まっていた消費者は、この問題に対し敏感に反応
した。8月以降鶏肉の消費は大きく減少し、価格も前年と比較して低い水準で推
移している。

  同国では、中国正月とイスラム教の正月に当たるハリラヤハジの2大フェステ
ィバルが2月に控えている。このため、例年、年末から2月にかけては鶏肉需要
が増加し、価格も上昇する。鶏肉生産者にとっては、1年のうち、最も重要な時
期に当たる。

  この時期を前にして行われた安全宣言は、鶏肉生産者にとって大きな意味を持
つものである。

  しかし、国内には使用禁止により使えなくなったニトロフランがまだ多量に残
っている状態である。このため、政府は、引き続き鶏肉のサンプリング検査を厳
しく実施する予定である。

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