LIPC WEEKLY

豪州の肉牛価格、急落


    

【シドニー駐在員 鈴木 稔 3月7日発】 豪州の肉牛価格は、今年に入り低

下傾向で推移してきたが、2月に入り下落のペースを早め、現在は前年同期に比

べ20〜30%安の水準となっている。米国、日本などの主要輸出市場の低迷が

主な要因と考えられるが、あまりの異常低落に、豪州肉牛協会(CCA)は「市

場原理を反映していない過剰反応」であるとして、緊急調査の実施を決定した。



  94年半ばより、ほぼ一貫して低下傾向で推移してきた豪州の肉牛価格は、季

節的な需要から95年末にはやや回復がみられたものの、今年に入り再び低落傾

向に転じ、さらに、ここにきて暴落ともいえる下落を見せている。



 価格指標は、米国向けの加工用(雌)牛肉、日本向けの大型の去勢牛、韓国向

け中大型去勢牛および国内向け若齢牛に大別され、通常、これらの価格には、対

応する各市場の動向が反映され、必ずしもすべてが同じ動きをするとは限らない。



 しかしながら、現状は、すべての価格が前年同期20〜30%安となり、80

年代前半の価格水準となっている。



 価格下落の要因としては、米国のさらなる生産拡大(96年1〜2月の生産量

は、前年同期の11%増)、4月からの関税引き下げをにらんだ日本からの引き

合いの減少、主要牛肉生産地帯であるクインズランド州、ニューサウスウェール

ズ州でのと畜頭数の増加(96年1〜2月は前年同期の13%増)などが考えら

れるが、このような「ブラックマンデー」的な価格下落には他にもさまざまな要

因が絡み合っていることも考えられる。



 生産者の売り急ぎの動きも出始めているようであるが、現時点では、価格の底

が見えていないだけに、今後、このような生産者の動きが価格低落にさらに拍車

をかける懸念もある。



 このような異常ともいえる価格低落を、CCAは「市場原理を反映していない」、

「(パッカーの)弱含みでスタートした96年の輸出市場への過剰反応」と言っ

ているが、輸出パッカーなどで構成される豪州食肉協議会     

(AMC)は、米国の供給過剰が要因であると反論している。



 また、AMCは、市況は70年代のように厳しく、この状況は短期的なもので

はなく、回復には米国のキャトルサイクルから2〜3年を要すると言っている。



 AMCのように、今回の大幅下落の要因を米国の生産拡大だけに求めることは

いささか無理があるように思われ、また、生産者サイドも納得しないと考えられ

るが、CCAは、生産者は短中期の展望を明確にする必要があるとし、そのため

に緊急の市況分析調査を実施することを決定しており、その結果が注目される。


元のページに戻る