LIPC WEEKLY

生産拡大に取り組むフィリピン酪農


    

【シンガポール特派員 末國 富雄 3月7日発】 フィリピンの牛乳自給率は、

生乳換算で1%に満たない。母子の栄養や外貨節約の面から酪農振興が強調され

てきているのであるが、多額の投資が必要なほか、せっかく生産された牛乳に処

理施設が不足するなど、不十分な対応もある。政府は酪農関係法を定めて酪農調

整庁を設立し、一元的な需給調整と生産振興に乗り出しているが、今後とも多く

の困難が予想される。



 酪農開発法が発効したのは、1年前の95年3月である。その目的には9つの

項目が掲げてあるが、要約すれば、酪農業の振興を通じて、牛乳・乳製品の生産

拡大を行い、生活・収入や栄養の改善を図りながら乳製品輸入を抑制し外貨を節

約することにある。



 同法によって、従来のフィリピン酪農公社(PDC)は改組されて酪農調整庁

(NDA)が設置されたほか、2億ペソ(約8億円)を導入して酪農開発基金を

設置した。同基金には、さらに毎年1.4億ペソが経常予算より投入されること

になっている。



 NDAの役割は、PDCが行ってきた酪農家などに対する技術指導や乳牛の品

種改良などもあるが、最も重要なものは乳製品の需給調整機能にあると思われる。

NDAのオカンポ総裁によると、需給調整を図るため毎月定期的に会議を開催し

ているほか、酪農の技術面を中心とした定期会議を年1回、豪州と開催している

という。



 フィリピンの94年国内生乳生産量は、約1万4千トンにしかすぎない。しか

も92年から94年までは、年率5%の割合で減少してきている。一方、輸入量

は生乳換算で189万トン、金額にして3億ドル余り(94年、PDC資料)と

いう輸入超過ぶりである。このため、NDAは乳製品や乳牛の生産状況を監視し

ながら必要と認めた時には、市販用の輸入乳製品だけでなく、加工原料に関して

も輸入数量や価格に一定のガイドラインを設定するとしている。また、生乳生産

者と乳業メーカーとの取引も、品質が価格に反映されるような制度を3年以内で

確立したいとしている。



 酪農協の数は全国に39農協、これがさらに8つの地域酪農協連に組み込まれ

ており、所属する生産者数は約2千戸である。全国の乳牛頭数は192万頭(94

年)であるが、その91%は同時に役牛でもある。ただ、生産された生乳の引き

取りをめぐって、地方の処理場の能力不足が指摘されており、わずかではあるが

増産傾向が見受けられる。フィリピン酪農連盟は、酪農をめぐるこれらの問題を

検討するため、今月6〜9日に全国規模の会議を開催する予定である。


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