LIPC WEEKLY

イギリス産牛製品禁輸措置の一部解禁否決


    

【ブラッセル駐在員 池田 一樹 5月22日発】 イギリス産ゼラチン、牛脂、

精液などの輸出解禁措置案を検討していたEU常設獣医委員会は、ドイツなどの

反対によりこれを否決した。解禁問題は来月の農相理事会で再度検討される予定

である。この結果を受けて、イギリス政府は、EUの通常業務へ協力しない旨を

表明するなど強硬姿勢を打ち出した。



  5月20日夜、EU常設獣医委員会は、EU委員会から提案された、イギリス

産牛肉などの輸出禁止に関するEU決定(96/239/EU)の一部修正案を、10時

間以上にわたる検討の末否決した。 



  修正案は、ゼラチン、牛脂、精液などについて、BSEの病原体を不活化でき

る条件下で製造されたものであることなどの条件付きで、輸出を解禁しようとし

たものである。ゼラチンや牛脂については、4月上旬、WHO(世界保健機関)

が、病原体を不活化できる条件下で製造されれば、安全である旨の勧告を発表し

ており、EU委員会は、この修正案は、WHOの科学的な勧告に沿ったものであ

るとしていた。また、イギリスは、BSE対策として、約4万頭の牛のとうた計

画を提案していたが、常設獣医委員会に際して、とうた対象牛頭数を8万頭に拡

大する旨を新たに提案して、票決に万全を期していた。



  票決は、特定多数決方式で行われ、ドイツ、オーストリア、スペイン、ポルト

ガル、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ の7カ国が反対した結果、否決数

が39票で、否決に必要な得票数の26票を上回った。



  常設獣医委員会の否決を受けて、EU委員会は、修正案をまとめ、農相理事会

に諮ることとしている。次回の農相理事会は6月3、4日にルクセンブルクで開

催されることとなっている。



  その理事会では、生産者への所得補償措置についても重要課題として取り上げ

られる予定である。所得補償措置については、当初、措置の即効性の観点から、

繁殖雌牛奨励金および雄牛特別奨励金に一定額を上乗せし、総額6億5千万EC

Uとするという単純なパッケージ案が検討されていたが、現在一部加盟国から、

補償総額や補償対象についてより柔軟な対応が求められている。



  常設獣医委員会でイギリス産牛製品の禁輸の一部解禁が否決されたことを受け

て、イギリスのメージャー首相は21日午後、解禁問題の進展が見られなければ

EUの通常業務に協力できない旨を発表するなど強硬姿勢に傾いている。科学的

拠を理由に議論されてきたはずの解禁問題は、やはり徐々に政治色を強めてきて

いる。




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