LIPC WEEKLY

ニュージーランドの生乳生産、史上最高は確実か


    

【シドニー駐在員  鈴木  稔  5月24日発】 ニュージーランドの酪農は、95

/96年の搾乳シーズンがほぼ終了の段階を迎えているが、秋季の好天にも恵ま

れ、生乳生産量は史上最高(乳固形分生産量で78万トン)の記録が確実視され

ている。その一方で、拡大する生産に処理能力が追いつかないなどの問題も深刻

化しつつある。



 ニュージーランド(NZ)の酪農は、近年の好況に沸き、酪農家の生産拡大意

欲も非常に強いが、5月末で終了となる95年の搾乳シーズンは、秋に好天に恵

まれ草勢が良好であったことも幸いし、生乳生産量は昨シーズンよりも約6%増

加し、乳固形分生産量で約78万トン(ニュージーランド・デイリーボード予測)

という史上最高の記録達成が確実視されている。



 ここ数カ月、チーズを除く乳製品の国際市況は弱含みで推移しているものの、

牧草に依存するNZ酪農は、現在の世界的な飼料穀物価格の暴騰にも影響されず、

その国際競争力は相対的にさらに強まってきていると考えられる。しかしながら、

目を国内に転じると、酪農が好調であるが故に新たな問題が生じてきている。



 その第1は、急激な拡大を続ける生乳生産にプラントの処理能力が追いつかな

いという問題である。これは、近年、特に酪農の拡大が進む南島で顕著であるが、

南島南部にあるサウスランド酪農協は、生産拡大に対処し、粉乳プラントを新設

し、昨年7月に稼動を開始したが、稼動初年度から処理が追いつかないという事

態に直面し、

今年2月にプラントの増設を決定した。



 新プラントの建設に要する時間と費用(NZの乳業メーカーは酪農協組織であ

るため、設備投資は組合員である酪農家の負担となる。)は、新規酪農家の参入、

生産拡大を制限する要因となろう。

 また、NZ最大の乳業メーカーであるニュージーランド・デイリーグループも、

年率3%の生産拡大が続けば、3年ごとに1億ドルの新プラントの建設が必要で

あり、この場合、新規参入組合員に対しては、特に大きなコスト負担を求める必

要があるとしている。

第2の問題点として、土地の急激な値上がりである。酪農好況は、酪農家の規模

拡大のみならず、羊毛、肉用牛経営から酪農経への転換などの新規参入も活発化

させているが、酪農場価格は、89年から94年の5年間でほぼ2倍となってい

る。

  輸出補助金の削減などにより、乳製品の国際市場におけるNZの地位はますま

す強固となり、外からは追い風が吹いているが、NZ酪農にとり、環境問題とと

もに、これら国内からの「逆風」にいかに対処していくかが今後の課題となろう。


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