LIPC WEEKLY

ベトナムの乳製品市場で販売競争が本格化


    

【シンガポール特派員 末國 富雄 5月23日発】 ベトナムの乳製品は、国

営企業であるビナミルク(VINAMILK)社がほぼ独占的に生産、販売してきた。同社

は、乳製品需要の急増によって好況を享受する中で、生産設備の拡大を行いなが

ら、生乳増産のため米国や豪州の協力で酪農開発も手がけてきた。しかし、ここ

にきて、他の乳業会社が市場参入するようになり、販売競争が始まろうとしてい

る。



 ビナミルク社はホーチミン市の中心街に本社をおくほか、国内に4つの乳製品

工場を所有している。この内、規模が最も大きいのが約1年前に建設されたハノ

イ工場で、同社の生産量の約4割の生産能力を持つ。同社の外事課によると、

95年の同社の生産量は、加糖練乳が6万7千トン(1億7千万缶)、粉ミルク

6千トン、UHT乳6千トン、ヨーグルト6千トン、アイスクリーム2千トンで

あった。また、総売上高は1兆3千億ドン(約130億円。0.01円/ドン)、

対前年比35%という増加ぶりである。ビナミルク社の製品は、地元紙による昨

年9月から半年間の「好感度」投票で1万票余りを獲得、国内で最も好ましい商

品として知名度も高い。



   実際に、ホーチミンにある本社では、素敵なデザインの包装紙に包まれた、

アイスクリームやヨーグルト、また、少し練乳の匂いが残る紙パックの200

ccロングライフ牛乳がそれぞれ2千ドン、3千ドンで売られており、女性客を

中心に混みあっているという。



 しかしながらその一方で、ベトナムの生乳流通量は極端に少ないという現状が

ある。ビナミルク社が95年に使用した生乳は、1万7千トンである。対前年比

74%増というものの、同社の乳製品の生産量からみるといかにも少ない。現在、

同国の生乳価格は3550ドン/リットルであり、これに刺激され、ホーチミン

市の乳牛頭数は1万5千頭に増加した。しかし、これは、ベトナム全体頭数の

60%に相当するという。まだ全国的には、乳牛の飼養頭数が少なく、1頭当た

り乳量も非常に少ない。しばらくの間は、原料を輸入した粉乳に頼らざるを得な

い。



 このような状況下で、ベトナムフォーモスト社(オランダの乳業会社との合弁

会社)は、5月上旬、ホーチミン市近郊に新設した工場の稼働を開始した。同工

場は日量16トンの生乳処理能力を持ち、加糖練乳(年間1万6千トン)、イン

スタント粉乳、飲用ヨーグルトなどの生産を行う。既に加糖練乳やヨーグルトを

「ダッチレディ」などのブランドで販売を開始している。同社は酪農業へは進出

しないとしており、原料調達は輸入が中心になると思われる。



 同社の操業は、ビナミルク社の独占状態を脅かすと考えられ、今後は既製乳製

品の輸入も加わり、新たな販売競争が展開されるものと予想される。


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