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豪州でニューカッスル病発生


【シドニー駐在員 藤島 博康 9月25日発】シドニー近郊の養鶏場で、ニュー
カッスル病(ND)の発生が確認された。豪州でのNDは1930年代に2例が確
認されたのみであり、関係者の衝撃は大きい。また一方で、これまで、NDの進入
阻止を大きな理由の一つとしていた鶏肉輸入に関する検疫条件の見直しにも、大き
な影響を与えそうだ。
 ニューサウスウェールズ(NSW)州農業省よると、9月18日、シドニー西部
と北西部に位置する2ヵ所の養鶏場でNDの発生が確認されたとしている。
 今回確認されたNDは極めて毒性が強いとされ、農業省の下、問題の養鶏場では
9万羽以上に及ぶと畜処分をはじめとするND拡散防止対策が講じられている。ま
た、NDが確認された養鶏場を中心に、シドニー市内を含む約60km四方を生き
た家きんおよび家きん肉の移動禁止区域、それを取り囲む周辺地域を監視区域に設
定するなど厳重な検疫体制が敷かれている。
 NDは伝染力が強い上、重症型の場合には罹患鶏の致死率も非常に高いことなど
から、養鶏業界で最も恐れられている病気の一つだが、これまで豪州での発生は、
外国船から廃棄されたND汚染鶏肉が原因となって、1930年と32年にビクト
リア州メルボルンでみられたのみだった。
 当時でも数千羽という鶏が処分されたが、今回の場合、生きた家きんおよび家き
ん肉の移動禁止区域だけで、NSW州の鶏肉生産全体の5〜6割を占めるとされて
いることから、今後、被害が一気に拡大する可能性もある。現在、問題の養鶏場か
ら出荷された鶏肉の追跡、回収については困難を極めているとされ、既に、業界内
からは「後は、(NDが)拡散しないように祈るより他ない」との悲観的な声も出
ている。また、シドニーは、寄生虫による水道水汚染が問題となった直後でもあり、
マスコミの反応次第では、一般の鶏肉消費にまで影響が及ぶと懸念されている。
 一方、今回のND発生は、豪州の鶏肉輸入に関する検疫条件の見直しにも大きな
影響を与える可能性もある。豪州政府は、タイや米国など鶏肉輸出国の要請により、
昨年11月に鶏肉輸入の解禁を決定した際に、疾病侵入防止という検疫上の理由か
ら、摂氏70度で143分間の加熱処理という厳しい条件を付しており、食用鶏肉
の輸入は実質的に困難な状況にある。
 この背景には、現政権による政治的な思惑が強く働いたとされており、国内自給
型の養鶏産業保護を優先し、輸入規制の緩和については、次期連邦総選挙まで先送
りを図ったものとされているが、豪州政府は科学的根拠に基づいた決定と主張して
いた。
 総選挙の投票日が10月3日に迫るなど、政治的な環境も変化しているが、これ
まで豪州政府は、NDが豪州に存在しないことを大前提に、鶏肉業界へのダメージ
が最も大きい疫病としてNDの上陸阻止を大きな理由の一つに「検疫」を守ってき
ただけに、今回の発生は、今後、検疫条件の見直しを早める大きな要因となる可能
性もある。

 


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