デンマークのオーガニック酪農家、農業利益4割増−欧州−平成11年4月第385号

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デンマークのオーガニック酪農家、農業利益4割増




【ブラッセル駐在員 池田  一樹 4月22日発】デンマークではオーガニック酪
農家の経営収支が向上していることが、同国食糧農水産省の農水産経済研究所の調
査で明らかになった。一般酪農家と比べても高い利益が得られている。

 この調査は、97/98年度のオーガニック酪農家の経営状況を取りまとめたも
ので、昨年度に続き第2回目である(海外駐在員情報通巻第336号)。

 オーガニックに転換済みの酪農家(以下「オ酪農家」と言う。)の戸数は291戸
と、昨年度(159戸)に比べ大幅に増加した。転換中の酪農家を加えた戸数も、昨
年度(324戸)を上回る385戸となった。オ酪農家の経営概況を昨年度と比較すると、
年間搾乳牛飼養頭数はほぼ同じであるが、畜産用地が大幅に増加した。新規オ酪農
家の経営規模が大きかったためであるが、全体としては、自給飼料基盤が充実した
こととなる。

 オ酪農家の経営収支を昨年度と比較すると、農業収益が増加し、農業経営費が減
少したため、農業利益が昨年度に比べて約4割増加した。

 農業収益の増加は、主に穀物収益の増加によるものである。生乳価格は昨年度よ
り低下したが、搾乳牛1頭当たりの泌乳量が増加したため、生乳収益はほぼ横ばい
となった。また、農地面積が増加したため、面積当たりで支払われているオーガニ
ック酪農への補助金も増加した。

 農業経営費の減少は、購入飼料費および雇用労働費が大幅に減少したことによる
ものである。オ酪農家は、一般酪農家に比べて、生産基準を満たすための設備投資
や広い経営面積により、減価償却費や雇用労働費が増加する。ただし、今回の調査
では、主として自給飼料基盤の充実により、購入飼料費が減少したため、両者の農
業経営費はほぼ同レベルとなった。

 
デンマークのオーガニック酪農家の経営状況 
        (単位:千デンマーククローネ/戸)
オ酪農家 一般酪農家
農家戸数(戸) 291(159)

農地面積(ha)     うち畜産用地 83.2(71.4)     62.0(54.4) 69.3       44.6
搾乳牛頭数1) 63.2(62.6) 66.9
農業資産額(期首) 5,036  (4,461) 4,420
うち不動産 3,603  (3,136) 3,159
泌乳量(kg/頭) 6,574  (6,341) 7,079
生乳価格(/100kg) 291  (305) 236
農業収益@              うち生乳収益        補助金2) 1,684  (1,608)
1,211  (1,209)  66.7(60.0)
1,543           1,120                 0
農業経営費A     うち飼料費       雇用労働費         減価償却費 1,063  (1,160)  260.1(302.2)  113.9(179.9)   199.3(181.7) 1,067      326.9     92.9     163.8
農業利益@−A=B 620.1(447.8) 476.1
農外収入C 172.3(225.8) 160.0
利益合計B+C=D 792.4(673.6) 636.1
純支払い利子E 382.6(372.8) 325.7
経常利益D-E=F 409.8(300.8) 310.4
家計消費などG 316.5(346.0) 284.5
当期利益F-G 93.3(▲45.2) 25.9
資産(期末) 6,651  (5,495) 6,214
負債 4,197  (3,897) 3,610
負債割合 63.1%  (70.9%) 58.1%
1)年間搾乳牛飼養頭数 2)オーガニック補助金
(注)1 カッコ内は昨年度の数値
      2 デンマーククローネは約18円

 デンマークのオーガニックミルクの生産量は、97/98年度には全体の3.5
%であったが、本年夏までには       7.5%にまで上昇するとみられている。ま
た、昨年末の時点では、デンマークの飲用牛乳の約2割、学校給食用牛乳の3割、
発酵乳の約1割、チーズおよびバターの約3%がオーガニックミルクから製造され
ていると報じられている。


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