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米国が豪州・NZ産ラムの輸入制限を決定



【シドニー 野村 俊夫 7月8日発】米国のクリントン大統領は、7月7日、
通商法203条に基づいて、豪州およびニュージーランド(NZ)からの輸入
ラムに関税を適用すると発表した。米国際貿易委員会(ITC)は、米国のラ
ム市況が昨年から大幅に低迷した原因は豪州やNZからの輸入が急増したこと
にあるとし、本年4月5日、クリントン大統領に、これらのラム輸入に対して
何らかの制限措置を導入するよう正式に勧告していた。

  ITCは、勧告の中で、具体的な輸入制限措置の案として、@関税割当の適用 、
A割当を定めない一律関税の適用、B輸入割当の適用、の3つを提示していたが、
今回発表された措置は、このうちの関税割当案を基本とする内容になっている。

]  大統領によると、今回の措置の実施期間は3年間で、初年度(99年7月22日
から1年間)の割当数量は約3万5千トン(98年の輸入実績)、枠内の適用税率
は9%と定められた。

  また、2年目以降は、割当数量が毎年約857トンずつ増やされる一方、枠内適
用税率は、6%、3%と順次引き下げられることになる。

  他方、割当数量を超過した場合の枠外輸入に対しては、初年度から順に、40%、
32%、24%という極めて高い関税が課されるため、枠外の輸入は実質的に不可
能となる。

  この内容をITC勧告の関税割当案と比較すると、同案では4年間の措置とされ
ていたものが3年間に短縮された反面、割当数量は据え置かれた。また、枠内輸入
は非課税であったのが課税対象とされ、かつ、枠外税率も初年度20%から約2倍
の高さに引き上げられるなど、輸出国側にとっては非常に厳しいものとなっている。

  ちなみに、大統領は、関税割当枠を98年の実績に基づいて国別に割り当てるため、
米国のラム輸入の約97%を供給している豪州・NZ両国は、一定の輸入アクセスが
保証されるとしている。

  しかし、4月以来、精力的にロビー活動を展開してきた輸出国側にとっては極めて
残念な結果であり、コソボ問題の対応で大統領の発表が大幅に遅れたことを"朗報の
兆し"と楽観していた関係者は、冷水を浴びせられた形となった。

  これに対し、豪州では、早速、政府および羊業界が抗議行動を開始した。

  まず、ヴェイル農漁林業相は、フィッシャー副首相兼貿易相と会談後に声明を発
表し、自由貿易を語るクリントン大統領は偽善者だと非難したうえで、世界貿易機
関(WTO)のセーフガード条項の討議で問題が解決できない場合には、正式に提
訴する旨を表明した。

  また、豪州羊肉協議会(SCA)も声明を発表し、米国の措置はWTOのルール
に完全に違反するものだと非難し、今回の措置によって恩恵を受けるのは、米国の
ラム生産者ではなく、不当な関税を徴収することになる米国財務省だと怒りを表し
ている。

  豪州政府としては、11月からのWTO次期ラウンド開始を前に、また1つ、厄
介な課題が増えたと言えよう。
 

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