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農業技術者の人材不足が深刻化(豪州)



【シドニー駐在員 野村 俊夫 5月17日発】先般、豪州の著名な大学の研究者が、
農業分野では有能な技術者に対する求人が大幅に増加しているにもかかわらず、こ
れに該当する人材が大幅に不足しつつあるとの深刻な懸念を明らかにした。

 豪州では、90/91年度から97/98年度にかけての7年間に、農業総生産
額が241億豪ドル(約1兆9,280億円:1豪ドル=約80円)から318豪億
ドル(約2兆5,440億円)へと32%増加した。この間、主要な輸出品目である
羊毛の国際市況の低迷や、アジア経済危機による需要の低下があったにもかかわら
ず、農産物輸出額も143億豪ドル(約1兆1,440億円)から251億豪ドル
(約2兆80億円)へと75%アップし、農産物生産に占める輸出向けの割合も、
数量ベースで59%から79%に拡大している。

 一方、農産物輸出の内訳を見ると、穀物、羊毛、牛肉が主要品目であることに変
わりはないものの、これらの伝統品目の割合が相対的に低下する一方、これに代わ
って、乳製品、ワイン、カノーラ(西洋菜種:油糧種子)、コットン、砂糖、各種
花き園芸作物などの新たな品目が大幅に台頭している。

 これらの成長分野では、極めて大規模な酪農経営、広大なブドウ栽培農場など、
従来には見られなかった企業的な経営や、新たな高付加価値品目が出現しており、
これらの管理運営や営業に関連する雇用機会が大幅に増加している。

 豪州統計局のセンサスによると、農業従事者数は全国で約43万7千人(98年
6月)であり、ここ3年間で3万2千人増加した。このうち、自営の農場経営者数
は一貫して減少していることから(約22万8千人)、管理運営・技術者などの被
雇用者の割合が大幅に増加していることになる。

 シドニー大学オレンジ農業校のチュードレー教授によると、同大学に寄せられる
農業関連の求人のうち、最近、特に目立って増加しているのは、大規模酪農・養豚
・フィードロットの管理運営者、バイオテクノロジー関係の技術者、ブドウ栽培や
花き園芸作物栽培の専門知識を有する者など、農業生産に直接関与する職種のほか、
農業経営・技術コンサルタント、高付加価値製品の開発コンサルタント、農業ジャー
ナリストなどのサービス業関係にも及んでいるとのことである。

 ちなみに、地域雇用エージェントからの聴取によると、約15年前までは、農業
に関連する求人全体のうち、特別な技術や知識を条件としない職種の割合が約半数
を占めていたのに対し、最近では、全体の90%が必要な学歴に加えて何らかの特
殊な知識や技術を雇用条件に加えているとのことである。

 こうしたことから、同教授は、今後、必要とされる有能な農業技術者が大幅に不
足することを懸念している。

 実際、同農業校の学生も、平均失業率が極めて高い中で(全世代平均で7.5%、
若年層はさらに高率)、全員が卒業後間もなく希望する職を得た。従来、農業関係
の職種は賃金などの条件面で不利とされていたが、現在では、高度な知識と技術を
条件に、相当有利な待遇が提供されている。それにもかかわらず、求人側は、有能
な技術者の絶対数が大幅に不足していることを訴えていると言う。

 豪州の農業が、伝統的な家族経営からハイテク産業へと質的な転換を遂げる中、
人材面で意外なアキレス腱が露呈しているということかも知れない。


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