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アルゼンチンから見た日本の牛肉事情



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 3月30日発】アルゼンチン農牧水産食
糧庁が日本の牛肉事情を公式情報として紹介した。最近、日本の牛肉市場研究が官
民で盛んだが、公式のものは少ないようだ。豪州を競争相手と考えているなど、ア
ルゼンチンの輸出マインドを知る上で興味深いものである。

○日本の牛肉消費
 99年は日本の経済不況のため牛肉消費は低調だったが、過去10年間の推移で
は、消費は確実に上昇している。年間1人当たりの消費は11kg(枝肉ベース)
で安定的。

 牛肉の国内生産は輸入牛肉の増加で減少を続け、98年の輸入牛肉は92年と比
較して約62%増加した。価格面で有利な輸入牛肉は、若い世代を中心に消費され
ているようだ。

○日本への主な輸出国
 主な輸出国は米国と豪州。豪州からは加工用の牛肉が多くを占めるので輸出額は
低い。96年以降米国の輸出量が豪州を抜いたが、われわれはその理由(以下)を
よく考えておくべきだろう。

 @ 米国は日本向けに特殊なカットの要請に応じられるが、生産の過半が輸出に
  まわる豪州はフルセット(1頭から取れる約12部位の部分肉のセット)で輸
  出せざるを得ない。

 A 米国の日本向けはグレインフェッド由来。輸出価格は高めで家庭用テーブル
  ミートやホテル、レストランに仕向けられる。豪州は日本向けに仕上げの穀物
  肥育はするが、基本的に輸出の7割近くがグラスフェッド由来である。

 B 米国は日本のスペックに合わせやすい  大型牛の生産が容易である。

○アルゼンチンの競争相手
 日本は豪州から主にグラスフェッド牛肉とカウミートを輸入している。したがっ
て、アルゼンチンの牛肉は、業務用と加工用(ハンバーグなど)仕向けの牧草肥育
の冷蔵、冷凍部分肉で豪州と競争できるだろう。また、アルゼンチンの食肉処理加
工業者は米国同様、多様なカットの要請にも応じられる態勢になっている。

○品質と安全性を重視
 食品の品質と安全性に関する日本の消費者の要求水準は極めて高い。政府も業界
もこれを反映した対応をとっている。牛海綿状脳症(BSE)、腸管出血性大腸菌O
157、ダイオキシンなどは言うに及ばず、消費者に可能な限りの情報を提供する
スタンスから最近では原産地表示を求める動きがある。日本の消費者重視の考え方
は、われわれがよく理解しておくべき点だろう。

○将来の牛肉生産
 日本の牛肉生産はコスト高で、特に和牛でそうである。最近の日本経済は厳しく
政府も補助金を多く出せない。2000年の国内生産は枝肉ベースで約53万トン
と推測される。日本の牛肉生産の弱点は牧草地が少ないために子牛生産にコストが
かかる点である。将来的に豪州から子牛を輸入し、日本で肥育することも考えられ
るかもしれない。


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