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アルゼンチンの日本市場アクセスの研究



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 4月13日発】先ごろ、アルゼンチンの
畜産情報誌編集長で畜産界を代表する論客として知られるイリアルテ氏が、畜産市
場関係者を対象に日本市場への牛肉輸出の可能性について講演した。同氏の日本か
らの帰国報告でもあり、その概要を以下に紹介する。

〇アルゼンチン畜産の強みと輸出品目
 アルゼンチンは世界に冠たる畜産国だが、日本の和牛には対抗しない方が得策。
霜降り肉は日本特許の発明品と考えるべき。産地ごとの品種改良の長い歴史は日本
独自のものである。

 アルゼンチンは豪州と違い、1頭から輸出向けと国内向けのどのようなスペック
にも対応可能。去勢牛の生体価格は豪州と比べ安くはないが、加工コストが安い分
価格は有利。

 アルゼンチンでは利用度の低い内臓やはらみ、ばら肉など、低価格品目への日本
の需要は高いようだ。高級肉だけを意識せずに、市場調査を行い、日本のユーザー
の要望に応じた製品に付加価値をつけて売ることが重要。もちろんロイン系の冷凍
肉も売れるだろうが、内臓や低価格の部分肉に一番期待できるかもしれない。アル
ゼンチンの食肉処理加工施設の衛生条件は問題ないと考える。

 牛の品種、年齢、仕上げなどについても基本的に日本のユーザーの要求はクリア
ーできるだろう。

〇アルゼンチン産牛肉輸出の弱点
 最大の問題は、チャーター船で最低35日以上かかる輸送期間。冷蔵肉の現地処
理後の賞味期限が60日以内ともいわれている日本の市場で冷蔵肉を取引するには
無理がある。かつて欧州でアルゼンチン産の90〜150日経た冷蔵肉を検査した。
何ら問題はなかったが。

 われわれが率先して日本にアサード料理のチェーン店でも開かない限り興味を示
してくれそうにないほど厳しく、かつ、牛肉のストックも十分にある市場に、資金
力で米国、豪州に大きく劣るこの国の食肉処理加工業者が宣伝活動を含めて日本市
場へアクセスできる気力と体力があるかどうか。

 日本のユーザーは、まじめな対応振りや堅実な商取引を求め、多様なスペック、
パッケージの工夫、価格で厳しい注文を出し、それにこたえてわれわれは何度もサ
ンプルを送る必要があろう。ただし、いったん日本から発注依頼を勝ち取り以後忠
実に約束を守れば長い付き合いができる。ウルグアイが良い例である。

 アルゼンチンでは国内需要が強いため、一部国内向け価格は、ヒルトン枠向けな
どを除く輸出価格よりも高い。国内市場に回る量を減らし輸出に回せるかどうか疑
問である。加えて、家畜頭数の減少傾向や、枝肉重量は増加傾向とはいえ世界の平
均を大幅に下回る中で、将来的な輸出余力に懸念が残る。

 日本市場は米国やEUと違い輸出枠の制限がないので魅力的だが、恐らく豪州産
より安くないと買ってくれないと思う。

 結論として、将来的には日本や韓国、メキシコなど新市場への輸出量は徐々に伸
びる可能性はあるが、数年後のアルゼンチンの輸出量は約40万トン(注:99年
は約33万トン(推定))と見るのが現実的だろう。


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