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USDA、食肉の原産国表示に関する報告書を発表



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 2月3日発】米農務省(USDA)食品安全検
査局(FSIS)は先ごろ、議会の要求に基づき実施した牛肉および羊肉の原産国
表示義務化の影響などを分析した報告書を発表した。

 原産国表示により消費者が国産品を選択し、生産者が利益を享受することができ
るとする全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)などの後押しで、第105回議会
(97/98年)において、原産国表示の義務化を現状の輸入段階から小売段階に
まで拡大する法案が、活発に議論された。

 しかし、議会では、コスト増を懸念する食肉加工業界などの反対で法制化には至
らず、99年度農業関連歳出法案通過時にUSDAに対して義務化の影響に関する
報告書提出を要求することで、結論の先延ばしが図られた。

 この報告書によれば、@原産国表示の義務化が食肉業界にコスト増をもたらすの
は明らかであり、それによって生産者には生産者販売価格の低下、消費者には小売
価格の上昇といった不利益が生じることも考えられる、A消費者が国産品を選択す
ることにより、生産者に利益をもたらすことも想定される。ただし、実際に消費者
が国産品をし好するかについては予測不能であり、また、利益がもたらされるとし
ても、その度合いは表示義務化の方法などに左右される、B表示上の用語の使い方、
表示義務化に伴う食肉関連会社の輸入品排除の度合いなどによっては、国際貿易ル
ール上の問題を生じる可能性がある、C米国の原産国表示義務化を契機として、輸
入国が米国と同様ないしは、より厳しい表示義務化を導入し、米国の食肉輸出に悪
影響を及ぼすこともあり得るなどの点が指摘されている。

 これらの分析に基づき、報告書では、議会が原産国表示義務の法案化を進める場
合、国内業界のコスト増の最小化および国際貿易ルールの順守に留意するよう求め
ている。

 今回の報告について、表示義務化に反対の姿勢をとる食肉パッカー等の団体であ
る米国食肉協議会(AMI)のボイル会長は、「小売段階での原産国表示の義務化
は、不必要かつ過剰なコストを食肉業界に強いるものであることが確認された」と
する歓迎のコメントを発表した。

 一方、表示義務化に賛成するNCBAは、今回の報告について、彼らの主張に対
して懐疑的な見方が出されたにもかかわらず、表示義務化の潜在的な利益を認めた
ものとする肯定的な見解を示した。また、同協会のスワン会長も、今後の表示義務
化実現に向けた基礎となるものと述べ、同報告書を好意的に受け止めている。

 米国は、世界最大の牛肉輸入国であり、98年には約120万トンが輸入された。
最大のシェアを占めたのは、豪州(32%)で、これにカナダ(31%)およびニ
ュージーランド(22%)が続いている。これらの多くは、ひき材などの加工用と
みられている。


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