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課題山積の中、新農牧庁長官を任命(アルゼンチン)



【ブエノスアイレス駐在員 浅木 仁志 1月6日発】昨年12月13日、ラパン
パ州選出の急進党議員アントニオ・ベロンガライ氏がデ・ラ・ルア新政権の下で農
牧水産食糧庁長官に任命された。同氏は、最近まで超党派の農業検討委員会の議長
であり、自らラパンパ州で食肉処理加工場を所有する肉牛生産者でもある。

(新政権下の省庁機構改革)
 デ・ラ・ルア新政権になって省庁の機構改革が実施されている。農牧水産食糧庁に
おいては以前3つあった副庁が農牧漁業食糧副庁(仮称)1つに統合され、なくな
った2つの副庁の代わりに顧問職と国家部長職を充実させている。以前ベロンガラ
イ上院議員のアドバイザーであったホルヘ・カセナベ氏が新しい副庁の次官に任命
された。

 農牧水産食糧庁については、この国の農業セクターの重要性にかんがみ、庁から
省への格上げ問題が出ている。これについて農業4団体が後押ししているが、上部
組織の経済省(旧経済公共事業省)が省益の関係から首肯していない。

 なお、新しい政権ができると政治ポストは交代するのがこの国の習わしで、農畜
産品衛生事業団(セナサ)では昨年口蹄疫や小麦の問題で来日したバルコス総裁に
代わり、獣医のオスカル・ブルニ氏が総裁ポストに就いた。同氏はアルフォンシン
政権のセナサ総裁で、当時の口蹄疫対策の中心人物であった。

(取り組むべき農業課題)
 前任のノボ長官が、舌禍事件で更迭を余儀なくされたアロンソ元長官と新政権の
つなぎ的存在で周囲の期待もさほどではなかったのに比べ、新長官の政治的手腕と
農業問題の精通ぶりに期待する声は大きく、政治基盤の固い大物議員が長官ポスト
に就いたとの評である。

 新長官が最優先で取り組んだのは、対策案の下地はメネム政権時にできていた農
業負債問題と穀物価格下落に対する農業融資対策である。前者は91年の兌換(だ
かん)法導入以来、農業者は高金利で国立銀行融資を受けたが、結局、借金が返せ
ないばかりか金利がかさみ、同銀行が融資担保に取っている膨大な優良農地など不
動産の競売を迫られているというものである。新長官は競売を今年4月まで延ばし、
その間に個々の負債案件を調査・整理し、必要な農家支援を行うことを決定した。
後者は小麦の国際価格が暴落したのを受け、生産者に対し、融資額1億ドル(10
5億円:1ドル=105円)、金利13.5%を政府金利負担3%で融資すること
を国立銀行と協議の上、合意した。これにより農業者は穀物価格が持ち直すまで取
引を延ばせるようになった。

 しかし、このほか、生産者のストライキにまで及んだ2つの新税への対応、訴訟
問題に発展しているヒルトン枠の配分、牛肉振興協会の行方、危機的状況にある酪
農セクター支援、食品などの衛生規定の改正など、農業予算のあり方自体が問題に
なる中で、新長官がどのように手腕を発揮するのか注目されるが、困難な船出とな
りそうである。


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