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EU、豚肉の中東欧向け輸出補助金をゼロに引き下げ



【ブラッセル駐在員 山田 理 6月29日発】EU豚肉管理委員会は、先般、@
豚枝肉およびバラ肉のEU域外向け輸出、ならびにA豚部分肉およびハムなど豚肉
製品の中東欧向け(一部の国を除く)輸出に対する輸出補助金を、6月15日からそ
れぞれゼロに引き下げることを決定した。

 99年7月〜2000年6月におけるEUの補助金付き豚肉輸出量は、ガット・ウルグ
アイラウンド(UR)合意に基づく限度数量を大幅に上回る67万4千トンに達する
見込みである(ただし、限度超過量はこれまでの限度数量未消化分の範囲内であり、
合意違反とはならない)。一方、来年度(2000年7月〜2001年6月)の限度数量は、
44万4千トンに設定されている。このため、輸出補助金の削減は避けられないもの
となっており、7月からの新年度の開始を控え、4月から3ヵ月連続での引き下げ
となった。

 EUの豚肉価格は、98年以降、生産過剰により記録的な低水準に落ち込んでいた
が、99年後半から回復傾向が見られている。2000年6月のEU域内の豚枝肉卸売価
格(市場参考価格:第3週まで)は、前年同月比18.8%高の146.9ユーロ/100kg
(約148円/kg:1ユーロ=101円)と前年を大幅に上回った。同管理委員会でも、
EU域内の豚肉市況はおおむね堅調であるとの認識で一致しており、補助金を引き
下げる環境は整っていると言える。

 一方、EUは、加盟交渉を進める中東欧諸国との間で農産物の貿易自由化(輸出
入に係る関税、輸出補助金などの相互撤廃、いわゆる「ダブル・ゼロ」)について
協議を進めており、ポーランドなどを除き、2000年7月以降、「ダブル・ゼロ」を
押し進めていくことで合意に達している。

 今回の全豚肉製品に対する中東欧向け輸出補助金のゼロへの引き下げは、これら
の合意を先取りするもので、対象国は、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガ
リア、ラトビア、エストニアの6ヵ国となっている。今後、豚肉だけでなく乳製品
や牛肉など他の農畜産物についても、輸出補助金や関税、輸入枠の取り扱いなどに
ついて見直しが順次行われるとみられる。

 EUの豚肉業界もこうした動きは予想していたものの、農畜産物の中で真っ先に
輸出補助金の引き下げが行われたこともあり、一部からは時期尚早とする声も挙が
っている。特に、イギリスではポンド高の影響による輸入増で豚肉価格の回復が遅
れていることもあり反発を強めている。

 2003年の加盟を目指して交渉を進めている中東欧6ヵ国の第一グループのうち、
ポーランドが農産物輸入に対する高関税の撤廃を拒んでいることなどで、加盟スケ
ジュールに遅れが生じる可能性が指摘されている。また、EUの東方拡大について
は、世論もあまり積極的ではないだけに、今後の加盟交渉をめぐる動きが注目され
る。


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