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MSA、ミレニアム科学賞を獲得(豪州)



【シドニー駐在員 幸田 太 7月13日発】国際食肉事務局(IMS)は7月4
日、牛肉の新たな食味保証制度を確立したとして、ミレニアム科学賞をミート・ス
タンダード・オーストラリア(MSA)の研究開発グループに送ることを発表した。

 MSA(「畜産の情報」海外編 2000年2月号海外駐在員レポート参照)は、豪
州食肉家畜生産者事業団(MLA)の前身の1つである豪州食肉研究開発公社(M
RC)によって93年に研究が着手され、以後豪州の食肉業界全体を巻き込み、消費
者の25万件以上に及ぶ試食やさまざな議論を重ね、今年に入り北部準州を除く各州
で制度が展開されている。

 今回の受賞に際しMLAのクロンビー会長は、「世界的に著名な食肉分野の科学
者によって、MSAが世界の食肉産業にとって有益なものであると認められたのは
自然なこと」とその自信のほどを述べるとともに、開発を担当したグループの努力
をたたえた。

 MSA独自の発想は、枝肉の客観的な評価を行うだけでなく、最終消費者が牛肉
を購入し、調理する際に、どのような基準で選択すれば良いのかを独自のラベルで
分かりやすく分類しており、まさに消費者の舌から出発した基準であると言える。

 また、特筆されるのは、格付けの構成要素として、部位、調理法、血統、個体の
成熟度、増体量、枝肉懸垂方式、pH値、温度管理、脂肪交雑度合、と畜後の熟成、
肉色と多岐にわたっている点である。

 さらに、斉一性を図るため、生産者段階で出荷する生体の履歴を証明する証明書
の添付と2年間にわたる保管が義務付けられている。また、将来的には電子耳標を
用いた全国家畜個体識別制度(NLIS)との情報交換により生産者に対する格付
け情報のフィードバックも念頭に置かれている。

 これらの要請に基づき格付けが行われ、その品質を保証するため、MSA検査員
による追跡調査が随時行われることにより、常にシステムの検証がなされている。
虚偽の販売に対しては反則金を徴収する徹底ぶりである。

 賞の授与は、今年9月にブラジルで開催される世界食肉会議で行われる。MSA
開発チームの代表として授賞式に参加予定のポーキングホーン氏にインタビューし
たところ、「MSAが豪州の食肉産業全体の活性化に貢献するよう今後も、消費者
のモニタリングや普及活動を続けていきたい」と今後の抱負を述べた。

 一方、豪州国内でもMSAは、その独自の発想に基づく技術と品質保証が評価さ
れつつあるが、あくまで任意参加の制度であり、参加に当たりコストに見合うプレ
ミアムの徴収問題や大手量販店の不参加の意思表示による一部事業計画の変更など、
事業展開に当たりいくつかの課題は残されている。

 しかし、今回の受賞によって国際的にその独自のノウハウが評価されたことは、
MSAの今後の国内展開を後押しするものになると期待されている。


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