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肉牛専業経営が15年ぶりに黒字に転換(豪州)



【シドニー駐在員 野村 俊夫 6月22日発】豪州農業資源開発局(ABARE)
は、6月15日、99/2000年度の農業経営動向調査報告書を公表した。これによると、
肉牛専業経営は、肉牛販売価格の上昇を主要因として前年度に引き続き改善され、
家族労賃や減価償却などの固定費を差し引いた経営収支が、全国平均では84/85年
度以来15年ぶりに黒字に転換する見通しになった。

 当該調査は、ABAREが、肉牛、羊および穀物の生産者(複合経営を含む)の
うち、農業生産施設評価額2万2,500豪ドル(約140万円:1豪ドル=64円)以上の
者を対象に、毎年、全国規模で調査しているもので、これらの経営の動向を把握す
る上で重要な指針となっている。

 肉牛生産者は、主に、肉牛専業経営、肉牛・羊複合経営および穀物・家畜複合経営
の3つのカテゴリーに分類されているが、このうち、肉牛専業経営が肉牛飼養頭数
全体の約67%を占めている。

 当該報告書によると、99/2000年度における肉牛専業経営の平均現金収入は18万
8,300豪ドル(約1,205万円)、同支出は13万7,400豪ドル(約879万円)で、差し引
きの現金収支は平均5万1,000豪ドル(約326万円)になると見込まれている。これ
は、近年の最低記録となった95/96年度の1万4,600豪ドル(約93万4,000円)と比
べると大幅に改善されることになる。

 この結果、当該現金収支から家族労賃や減価償却などの固定費を差し引いた経営
収支は、平均4,200豪ドル(約26万9,000円)となり、金額は決して多くはないもの
の、全国平均では実に15年ぶりに黒字に転換する見通しになった。

 これについて、当該報告書は、99/2000年度に肉牛販売価格が約8%上昇したこ
とが大きいとしており、肉牛販売頭数の全体的な減少や、素牛・燃料価格などの上
昇に伴う現金支出の増加を、十分に補うことができたと説明している。

 肉牛販売価格が上昇した要因としては、米国の好景気や東南アジア諸国の急速な
経済復興によって牛肉や生体牛の輸出需要が強まったことと、大幅な豪ドル安によ
って肉牛生産者の手取りが押し上げられたことが挙げられる。

 一方、肉牛の主産地は、2年連続で比較的良好な気象(適度な気温と降雨)に恵
まれ、生産条件が整っている。このため、家族労賃などを差し引いた経営収支の余
剰分は、今後、牛群の拡大に向けて積極的に投資される可能性が高いとみられてい
る。

 国土が広大で自然環境が多様な豪州では、生産地域や経営規模の相違によって肉
牛生産を営む条件が大きく異なるため、その経営動向について一概に述べることは
極めて難しい。しかし、今回の報告書を見る限りにおいては、長らく不振に苦しん
できた豪州の肉牛経営が、ようやく全般的に底上げされつつあることは間違いない
と言えそうだ。


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