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米国の環境規制と養豚地域の変化



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 9月13日発】米農務省(USDA)は先ごろ、
環境規制と養豚地域の変化に関するレポートを発表した。

 米国の養豚経営体数は、ここ10年間で半数以下になったものの、全体の飼養頭数は、
1戸当たりの規模拡大により、比較的安定的に推移している。一方、養豚地域はここ
数年間で、テキサス州、オクラホマ州、ユタ州などの新興地帯での生産が拡大して
おり、例えば、最新の農業センサス(97年)結果によれば、郡別豚飼養頭数ランキ
ングにおいて、オクラホマ州テキサス郡は前回センサス(92年)の797位から3位
へ、テキサス州ダーラム郡は同1,361位から49位へと大きく順位を伸ばしている。
養豚の生産地域移動については、豚が他の畜種と比較して、物理的に移動が容易で
あること、肉牛などと異なり土地との結び付きが弱いこと、契約生産の普及により
新たな土地で新たに契約を結ぶことが可能であることなどの要因も指摘されている。

 米環境保護庁(EPA)によれば、農業は河川などの水域の主要な汚染源の1つ
であり、報告されている水質汚染問題の59%に関与しているという。さらに養豚に
おいては、大規模化への懸念もあって、環境規制が強化されており、ある調査では、
こうした規制に対処するための養豚生産者によるふん尿管理コストは、数年前との
比較で肉豚1頭当たり0.40〜3.20ドル(約44〜349円:1ドル=109円)上昇したと
推計されている。

 EPAは、全国汚染物質排出排除システム(NPDES)に基づき、1千家畜単
位(肉豚では2千5百頭)以上の経営体には、点源汚染源として、ふん尿の貯蔵に
関する許可証の取得を義務付けているが、実際にはその権限は、州や郡などの地方
政府に委任されており、その取り扱いがそれぞれの地域によって異なっている。ま
た、非点源汚染源としての規制についても、地方政府が独自に行っており、地方によ
り規制の程度が異なることも、養豚地域の移動を促す背景の1つとして指摘される。

 USDAは、各地域における環境規制の厳格さの計測は困難としながらも、家畜
生産は環境規制の緩やかな地域へ移動する傾向があると推測している。ただし、環
境規制の厳しい地域にあっても、養豚経営体が移動しているところがあり、その理
由として、規制が明確化されているため、今後の規制強化に係る不安定さが少なく、
将来の経営に必要な計画を事前に準備できるためとUSDAは見ている。

 USDAは、移動先を決定する要因として、環境規制のほかに、降雨量、大規模養豚
経営体の進出状況、飼料コストなども挙げている。また、西部地域では、主要輸出先
である日本市場への距離的なアクセスの良さ、豚の疾病が比較的少ないことなどの
要因も指摘されている。


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