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EU、動物福祉の観点から豚飼養基準を強化


【ブラッセル駐在員 島森 宏夫 12月6日発】EU委員会は11月9日、動物福祉の
観点から、豚の飼養基準(理事会指令91/630/EEC)を改定・強化することを決定した。
今回の改定は10月23日の改定に続くもので、豚飼養時に遵守すべき事項として、最
低照度、最高騒音値、豚が常時水を飲めるようにすること、離乳時期は4週齢以上
とすることなどが細かく盛り込まれた。EU加盟国は、今後法律改正などを行い、
2003年1月からこれらの要件を適用しなければならない。規定の概要は以下のとお
りである。

(10月23日理事会指令2001/88/EC)

1.コンクリート製のスノコを、群飼育時の床材として用いる場合について、最大
 隙間幅および最低板幅を、豚の種類に応じた基準に沿ったものとすること

2.経産豚および未経産豚(経産豚の飼養頭数が10頭以上の農場に限る)は、種付け
 後4週目から分娩予定の1週前まで群飼育をすること。また、群飼育時には各個
 体に十分に給餌される給餌システムとすること。ただし、特に攻撃的な豚や病気
 の時などは、一時的な個別飼育を認める。

  群飼育の場合、経産豚および未経産豚1頭あたりの床面積は、それぞれ2.25u、
 1.64u以上とする。

3.豚が飢えを満たし、飼料をよく噛むように、乾乳期の妊娠豚には、高カロリー
 飼料に加え、かさばる高繊維質の飼料を十分に与えること

4.豚の飼育に従事する者に対し、関連規則についての指導を受けさせること

(11月9日委員会指令2001/93/EC) 

1.豚飼育施設における連続騒音レベルは、85デシベル以下にすること。また、不
 断、突然の騒音を防止すること 

2.1日8時間以上は40ルックス以上の照度下で豚を飼育すること

3.豚が鼻で地面を掘り、物を探す活動ができるように、わら、乾草、木、のこ屑
 などを常時十分に用意すること 

4.2週齢を越える豚については、常に十分な量の新鮮な水を飲めるようにするこ
 と

5.治療・診断目的以外で、豚の体を傷つけることは、次の場合に限る。

  ・	生後7日までに、子豚の歯の角を削るか切り取り、滑らかにすること

  ・	ほかの個体への危害防止および安全面から、雄豚の牙を短くすること

  ・	尾の一部分を切り取ること:断尾

  ・	(組織をむしりとる以外の方法による)去勢

  ・	屋外で飼育する場合の国内法に従った鼻輪着装

 ただし、子豚の歯削り、断尾は、実施前に、飼育環境や飼育密度などを考慮し、
そうした環境を改善しても、母豚の乳頭やほかの豚を噛むことが防止できない場合
に限り実施すること

6.豚の種類ごとの飼育条件

 (雄豚)
 自然交配も行われる畜舎について、最低床面積は成雄豚1頭につき10u以上とし、
畜舎内に障害物を置かないこと。なお、本規定は、新たに建てられる新築・再築の
建物では2003年1月から適用し、すべての飼育場については2005年1月から適用
する。

 (子豚)
 母豚や子豚の福祉や健康に悪影響がある場合を除き、子豚は28日齢まで母豚から
離乳してはならない。ただし、母豚の飼育される場所と別の建物で、子豚への病気
の伝染を防ぐために消毒などが実施された特別な畜舎へ移動する場合には、最高7
日離乳を早めることができる。


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