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イギリス、20年ぶりに口蹄疫発生



【ブラッセル駐在員 山田 理 2月22日発】イギリス農漁食料省(MAF
F)は2月21日、イギリス東部のエセックス州において、食肉処理場の豚お
よび近郊農場の牛に口蹄疫の発生が確認されたことを明らかにした。EU域
内では、昨年ギリシャで発生しているが、同国での口蹄疫の発生は、81年以
来20年ぶりのこと。

 今回の発生は、食肉処理場に2月16日に搬入された豚27頭に口蹄疫感染の
特徴の1つである水泡が認められたとの報告が発端となった。このため、当
該食肉処理場および豚を出荷した2農場を中心に半径8キロの範囲で家畜の移
動が20日から制限された。口蹄疫の発生確認後は、食肉処理場を中心とした
半径約10キロの感染区域(infected area)が新たに設定され、区域内の反す
う動物(牛、羊、ヤギなど)および豚などの移動が制限された。

 食肉処理場が広範囲から豚を集荷していたこともあり、感染源および感染
ルートは今のところ特定されていない。

 こうした事態を受けて、EU委員会は同日、3月1日までの暫定的な措置
として、イギリスから他のEU加盟国への生体家畜および畜産物の輸出禁止
を決定した。対象となる品目は、牛、豚、羊、ヤギおよびその他の偶蹄類の
生体ならびにこれらの家畜から得られた食肉、食肉製品、牛乳、乳製品、皮
革などの畜産物である。ただし、2月1日より前に生産されたものおよび生
産過程における処理により口蹄疫感染の危険性のない畜産物は、対象から除
外された。

 3月1日以降の対策については、2月27日に開催される常設獣医委員会(
SVC)で再度検討される予定である。

 イギリスの畜産業は、ここ数年、度重なる家畜疾病の問題で大きな打撃を
受けてきた。

 96年の牛海綿状脳症(BSE)問題では、牛肉の国内市場縮小だけでなく、
牛肉や生体牛の海外市場を完全に失い、肉牛生産者や牛肉業界は深刻な痛手を
被った。BSE対策が軌道に乗り、輸出を再開した矢先、フランスやドイツな
ど大陸でBSE問題が再燃した。この結果、EU産牛肉の輸入禁止の動きが世
界的に広がり、イギリス産牛肉の海外市場への復帰の道が閉ざされてしまった。

 また、昨年8月には13年ぶりに豚コレラが発生し、豚肉業界も有力な海外市
場を失うことになった。豚コレラが沈静化し、輸出再開に係る手続きを進めて
いたときだけに、今回の口蹄疫発生はイギリス豚肉業界にとって最悪のタイミ
ングとなった。

 イギリスの牛肉、豚肉および羊肉(生体を含む)の輸出額(2000年)は、5
億7,900万ポンド(約99億円:1ポンド=171円)に上る。暫定的とはいえ畜産
物等の輸出禁止措置の影響は決して小さいものではない。輸出額の55%(3億
2千万ポンド)を羊肉が占めていることから、羊生産者や羊肉業界に対する影
響が特に懸念されている。また、97年の台湾における例を見るまでもなく、口
蹄疫は伝染力が強く、感染が拡大した場合の被害は甚大である。

 昨年3月のわが国での92年ぶりの口蹄疫発生では、関係者の迅速な対応と的
確な防疫対策により、短期間での清浄化を実現した。この際、イギリスの口蹄
疫防疫マニュアルを研究していたことが有益であった言われている。

 イギリスにおいても同様に、口蹄疫がまん延することなく、早期の清浄化実
現が望まれるが、2月22日には、3件目となる口蹄疫の発生が確認されるなど、
予断を許さない厳しい状況にある。、


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