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カナダ、肉牛個体識別制度を実施



【ワシントン駐在員 樋口 英俊 2月20日発】カナダでは今年初めか
ら、家畜衛生や食品安全性の問題に備えるため、肉牛の個体識別制度が
実施に移された。この制度の実施機関は非営利団体であるカナダ肉牛個
体識別エージェンシー(CCIA)で、カナダ肉牛生産者協会(CCA)
、カナダ畜産マーケティング協会、カナダ獣医学協会などの関連団体か
ら構成されるボードメンバーによって運営される。

 この制度は、カナダ家畜衛生法の家畜衛生規則に基づくもので、牛が
生産された農家(farm of origin)から出荷される前にCCIAが承認し
た耳標を装着することが義務付けられる。耳標には個別識別番号および
そのバーコード、国別コードおよびCCIAのロゴなどが記載されるが、
牛群の番号は付されない。輸入された肥育素牛については、最初の肥育
場所において直ちに耳標を装着することが義務付けられる。

 耳標は、CCIAの承認を受けたサービスセンターなどから配付され、
サービスセンターでこの配付情報が記録されることとなっており、生産者
には記録の義務は課されない。この耳標による情報は牛がと畜場へ出荷さ
れ、枝肉検査を行う時点まで維持され、牛に家畜衛生または食品安全性上
の問題が生じた際には、カナダ食品検査局(CFIA)がCCIAのデー
タにアクセスし、当該牛の出荷元を特定し、直ちに必要な措置を講じるこ
ととされている。

 CCIAは、出荷元が特定された場合でも、その賠償責任は従来と同様
で、制度の有無に関わりがないことを強調している。

 カナダでは、酪農と牛肉業界が共同で家畜の個体識別制度の戦略を策定し、
牛肉部門についてはCCIAが、酪農部門については全国家畜個体識別(N
LID:National Livestock Identification)が実施主体となっている。酪
農部門については、95年から牛肉部門に先行して、個体識別プログラムを実施
しており、現在までに40万頭を超える乳牛用に耳標が配付されている。

 肉牛部門については、97年8月にCCAが、全国的な個体識別に取り組む方
針(Business Plan)を決定し、以降その包括的かつ効率的な実現に向けて検
討を重ねていた。なお、ケベック州については、独自の個体識別プログラムを定
め、CCIAやNLIDと協調しながら実施をしている。

 この制度の実施スケジュールについては、今年1月1日以降、生産農家での
出荷前までの耳標装着義務付け、7月1日以降が生産農家から既に移動されて
いる牛への耳標装着およびと畜場での耳標の読み取りと枝肉検査時点までの個
体識別情報の維持が義務付けられることとなっている。なお、これらの履行義
務違反に係る罰金は、2002年7月1日以降に課せられるが、耳標が脱落してし
まう可能性も考慮して、全耳標装着数の5%以下の紛失に関しては、罰金の対
象外とされるものとみられる。



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