ALIC/WEEKLY


マレーシアで躍進を狙うネスレ



【シンガポール駐在員 宮本 敏行 5月10日発】スイスを本拠地とする世界的
食品企業であるネスレ社の現地法人であるネスレ・マレーシア社は、2003年に発足
が予定されるアセアン自由貿易圏(AFTA)をにらみ、今後2年間で1億5千万
リンギ(約48億円:1リンギ=32円)を投資してマレーシアにおける事業を強化・
拡大していくと発表した。このうち、1億500万リンギ(約33億6千万円)を、主
として「ミロ」の商品名でマレーシアやシンガポールなど東南アジアで広く親しま
れている、脱脂粉乳を添加したチョコレート飲料の生産拡大に、4,500万リンギ
(約14億4千万円)を情報および一般技術、販路拡大に投じるとしている。また、
今年中に新たな5千万リンギ(約16億円)を投資してシリアルの生産に乗り出し、
今後、東南アジアにおけるミロおよびシリアルの生産・流通基地を目指すとしてい
る。

 同社は1912年、マレーシアのペナン島に加糖れん乳の流通センターを建設した。
1962年には第1号の加糖れん乳工場を立ち上げ、現在ではそのほかに6工場を所有
しており、その稼働率はほぼ100%に近いとされる。ロペス社長は、世界的な食品
企業となったネスレ社にとって、AFTA発効後の自由化された東南アジアの食品
需給戦略をリードしていくためには、マレーシアにおける活動基盤のてこ入れが欠
かせないと語っている。

 主力商品であるミロの浸透により、ネスレ社はチョコレート飲料の分野で9割の
シェアを保持するが、本品は、2000年における同社の国内総売上高(22億リンギ=
約704億円)の2割を占めている。また、同様に本品の輸出額は総売上高の8.7%を
占めており、輸出先は隣国のシンガポールをはじめ、タイ、インドネシア、フィリ
ピン、米国などに及んでいる。ロペス社長は、将来的にはハラル(イスラム教に従
った食品に関する規律)を順守する西アジアも注視していきたいとしており、総売
上高に対する輸出の割合は、今年は9.3%、2002年には11%へと拡大すると見込ん
でいる。また、マレーシアの第2四半期の国内総生産(GDP)成長率が5〜6%
以上に改善されれば、今年の収益は2ケタの伸び率を達成できるとしている。

 そうした売り上げの拡大が予想される中、同社はこのほど、複数の商品の価格を、
一斉に3〜5%値上げすることを決定した。同社が主に使用する原材料は生乳、コ
コア、コーヒーおよびヤシ油であるが、このところ、これら原材料の価格がかなり
上昇していることがその理由とされる。2000年第4四半期と今年の第1四半期を比
較すると、生乳が24%高の100ポンド(約45kg)当たり11.5ドル(約1,426円:1ド
ル=124円)、ココアが40%高の1トン当たり1,151ドル(約14万3千円)となって
おり、同社では、優れた製品を提供し続ける上で、値上げはやむを得ない措置とし
ている。

 業界関係者の間では、こうした値上げを敢行しても、同社はマレーシアにおける
食品業界のマーケット・リーダーであり、優れた販売網を構築していることから、
物価上昇や米国経済低迷のあおりで国内消費が鈍りつつある中にあっても、現在の
利益を維持することができるとみられている。


元のページに戻る