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2002年の10大ニュース


ブエノスアイレス駐在員事務所【 犬塚 明伸、玉井 明雄 】

1.混迷を深めるアルゼンチン経済、農業への影響大きく
 2001年12月23日、公的債務の一時支払い停止を宣言したアルゼンチンは、91年
以来続けてきた1ドル=1ペソの固定為替相場制を廃止し、公定固定為替相場制(
1ドル=1.4ペソ)と変動相場制を併用する新経済対策を1月9日から実施した。そ
の後、完全変動相場制に移行(2月11日)し、6月末には1ドル=4.0ペソ弱まで
下落を続け、その後やや回復し10〜12月は同 3.5〜3.6ペソで推移している。こう
した中、新政権下の最初に取り組むべき課題は、@ ドル取引で事実上機能が停止
していた穀物取引の正常化、A 口蹄疫発生により2001年3月から生鮮牛肉の輸入
が禁止されていたEU市場の解禁であった。


2.ブラジル、牛の個体識別制度に関する規制を1月に制定、7月から始動
 世界各地で食品の安全性への関心が急速に高まる中、ブラジル農務省は1月9日、
牛(水牛を含む。)の個体識別制度(Sisbov)に関する規制を制定した。同制度の
目的は、国内で生産または国外から輸入されたすべての牛の個体識別を実施するこ
とにより、生産履歴の追跡を可能にすることである。個体登録の実施機関および経
歴の証明書発行機関は農務省が認定することになっており、6月18日、民間企業4
社が認定された。EU向けに肉用牛を生産する農場は、今年6月末までに登録する
ことが義務付けられ、Sisbovは7月から始動した。  
  なお、2007年12月までにすべての牛に対して段階的に導入されることになってい
る。


3.ブラジルにおける遺伝子組み換え作物の自由化進まず
 ブラジル連邦議会下院の遺伝子組み換えに係る特別委員会は3月12日、遺伝子組
み換え作物の作付けおよび販売法案を承認した。これは、遺伝子組み換え作物に関
して、国家バイオ安全技術委員会が、@環境および人体に対する最終安全評価を実
施すること、A環境に対する影響の事前調査を免除する権限を有すること、B生産
・販売に対する許認可権を有することなどから成る。しかし、権限が過度に集中し
ているとして、消費者保護団体などからは問題視する声が上がった。自由化には、
下院および上院での同法案の審議・可決、あわせて連邦控訴裁判所の遺伝子組み換
え大豆の生産・販売を解禁する判決が必要であるため、紆余曲折が続いている。


4.パラグアイで口蹄疫発生 
 ブラジルの国境近くにあるパラグアイ東部の牧場で口蹄疫の疑いのある牛が見つ
かったことに関し、パンアメリカン口蹄疫センターとチリ、ボリビアを含めたメル
コスル等関係6カ国が行った調査の結果、O型ウイルスを確認、口蹄疫の発生が確
定した。このため、EUは、隣接するブラジルのマッドグロッソ州からの牛肉輸入
を停止した(なお、パラグアイの発生地域からの輸入は従来から認められていない)
。一方、ブラジルのマットグロッソドスル州の獣医師がパラグアイ衛生当局の許可
を得ず、ブラジル人所有のパラグアイ側農場に入って診断していたこと等に対し、
パラグアイ国内では外国人に対して農地所有を規制する動きが出た。


5.アルゼンチン、農産品に対する輸出税に農業団体などが反発
 アルゼンチン経済省は、大幅な税収不足をカバーするため、3月4日付け決議(
3月6日施行)で、穀物などの1次産品に10%、食肉を含む畜産加工品・工業品に5
%の輸出税を賦課した。さらに4月5日付け決議(4月9日施行)で、穀物、油糧
種子、穀粉、植物性油などの農産品に対する輸出税を20%に引き上げた。これらに
対し農業団体などが強く反発し、一部の団体が農業ストライキを実施した。また、
4月16日付け決議で、輸出税20%の課税期間を3月4日付け決議で決められた課税
措置開始の3月6日まで遡って適用するとしたため輸出業者が強行に反対し、輸出
業務を停止した。最終的に4月16日付け決議は取り消され、4月9日からの適用と
なった。  


6.アルゼンチン、再開されたEU向け高級牛肉の輸出が好調
 2001年3月に発生した口蹄疫のため、EUへの牛肉輸出が禁止されていたが2月
に再開された。EU向けアルゼンチン産高級牛肉(ヒルトン枠:対象期間は前年7
月〜当年6月、対象数量28,000トン)の輸出量は、2月約1,600トン、3月約4,600
トン、4月6,600トン、5月約7,950トン、6月約6,150トンで合計約26,900トンと
なった。これは、ヒルトン枠対象数量の96%を5カ月で輸出したことになる。なお
、1キログラム当たりのFOB価格は、口蹄疫発生前の2000年で1キログラム当た
り平均7.2ドル(約886円:1ドル=123円)であったが、2002年2〜6月の平均は3.5
ドル(約431円)と半分以下となっている。


7.アルゼンチンのパタゴニア地域が口蹄疫ワクチン不接種清浄地域に認定
 アルゼンチンは、口蹄疫ワクチン接種キャンペーンを実施して、口蹄疫撲滅を推
進しているが、パタゴニア地域だけはワクチンを接種せずに清浄地域を保ってきた。
それにより、EUは5月2日付け決議338/2002により、南緯42度以南(パタゴニア
地域)を口蹄疫ワクチン不接種清浄地域とし、骨付き生鮮牛肉・羊肉の輸入解禁措
置を決定した。また、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)は、国際
獣疫事務局(OIE)に対し、南緯42度以南を口蹄疫ワクチン不接種清浄地域とし
て承認するように要請しており、5月26日から開催されたOIE総会で承認された。


8.経済要因が生乳生産動向に大きく影響(アルゼンチン)
 アルゼンチン農牧水産食糧庁によると2002年1〜10月における主要乳業メーカー
の生乳取扱数量(全国の生乳生産量の約60〜65%に相当)は、前年同期比14.6%減
の401万キロリットルとなった。アルゼンチンの酪農経営は、輸入資材や補助飼料
への依存度が高いことから、2002年1月に実施された通貨切り下げにより生産コス
トが大幅に上昇する一方で、その上昇分をカバーするだけの乳価引き上げが行われ
ず、結果的に、収益性の悪化による離農の増加につながった。


9.ブラジルの鶏肉輸出が好調、2001年に引き続き、2002年も増加
 ブラジル鶏肉輸出業者協会(ABEF)がとりまとめた輸出動向によると、2001
年1〜12月の鶏肉輸出量(骨付きベース)は、過去最高を記録した2000年を37.8%
上回る 124万9千トンとなった。また、付加価値の高いパーツでの輸出の大幅な増
加を反映して輸出額も大きく増加し、前年比 60.3%増の12億9千万ドル(約1,587
億円)となった。このような増加傾向は、今年に入っても引き続き、2002年1〜9
月の鶏肉輸出量は、前年同期比25.2%増の113万9千トンとなった。


10.好調を維持するブラジルの牛肉輸出
 ブラジル開発商工省貿易局によると、2002年1〜10月における同国の牛肉輸出量
(製品重量ベース)は、前年同期比14.5%増の46万6千トンとなった。また、米農
務省によると、ブラジルの牛肉輸出量(枝肉重量ベース)は、2002年が前年比12.0
%増の83万8千トン、2003年が10.4%増の92万5千トンと予測されている。輸出が
好調な背景としては、レアル安、低い生産コスト、同国の口蹄疫清浄化に対する外
国からの信頼性の高まりなどが挙げられている。



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