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2002年の10大ニュース


シドニー駐在員事務所【 粂川 俊一、幸田 太 】

1.干ばつの影響深刻化、たび重なる穀物減産予測(豪州)
 豪州では、今年に入ってニューサウスウェールズ州を中心に発生し、拡大した干
ばつの影響が深刻化している。豪州農業資源経済局(ABARE)が四半期ごとに
穀物の収穫状況を予測する穀物レポートは、2002/03年度冬穀物生産について、干
ばつ特別号も刊行されるなど発表のたびに下方修正してきたが、今年最後の同レポ
ート(12/2発表)では、94/95年度以来最も少ない1千620万トン(前年度比△56%
)の収穫を予測した。夏穀物についても、作付け面積の大幅な減少から 82/83年度
以来最も少ない収穫を予測している。連邦政府は11月6日、今年度の経済成長率が
3%(当初3.75%)に下方修正される中、干ばつにより被害のあった農家に対し特
別災害支援(Exceptional Circumstance)を適用することを発表した。
 

2.豪州酪農庁、日本向けチーズの輸出専売機能を廃止
 豪州酪農庁(ADC)は3月1日、日本向けチーズの輸出専売機能を、今年6月
30日をもって廃止すると発表した。これは、6ヵ月にわたる酪農乳業界による検討
の後、豪州酪農評議会(ADIC)と、豪州乳製品組合(ADPF)による合意を
得てADCが決定したものである。チーズに続き、脱脂粉乳など他の乳製品につい
ても同様の扱いとなったため、ADCの日本向け乳製品の輸出専売機能はすべて廃
止された。また、酪農産業法改正法案が10月10日に成立し、ADCと酪農研究開発
公社(DRDC)2団体の統合を核とする業界団体再編が実現に向け前進した。


3.NZ・豪州乳業大手が消費者向け乳製品会社を統合
 ニュージーランド(NZ)乳業最大手フォンテラは7月1日、同社が株主として
25%を所有し、メルボルンに拠点を置くボンラックフーズと、フォンテラ傘下の消
費者向け乳製品会社等を統合することに合意したと発表した。この統合により設立
される会社はオーストララシアン・フード・ホールディングス社が設立された。フ
ォンテラは3月に、世界的な大手食品メーカー・ネスレSAとの南北アメリカ大陸
における合弁企業デーリーパートナーズアメリカ社設立に合意するなど国際市場へ
の躍進が目立ったが、今回の統合は、自らの「地元市場」として豪州を取り込む動
きの地固めとなりそうだ。


4.豪州、米国とFTA交渉開始に合意
 豪州連邦政府のハワード首相とベール貿易相は11月14日、世界貿易機関(WTO)
非公式閣僚会合出席のため訪豪した米通商代表部(USTR)のゼーリック代表と
会談し、両国間の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を始めることで合意し
た。両国間のFTA交渉については約2年前に豪州から米国に対して提案されてい
たもので、2004年11月の米大統領選の前までに合意することを目指している。交渉
に際しては、豪米双方にとって困難な利害調整が予想されるものの、豪州産農産物
の2番目に大きい市場である米国へのアクセス拡大を目指し、豪州側の期待感は総
じて高い。


5.米国向け牛肉輸出割当枠配分、決着(豪州)
 トラス農相は6月27日、懸案となっていた2002年の米国向け牛肉輸出割当枠の管
理計画について、直ちに実施に移すことを明らかにした。同農相は当初(5月)、
輸出業者ごとに米国向け輸出実績を基に全体枠の6割を配分し、残りの4割をその
他向け輸出実績を基に配分することを基本として提案していた。この案に、不測の
事態に備えるための政府管理分の上乗せと、その配分などに関して、食肉産業界以
外から選出された委員で構成される審査委員会を設けて対応することなどが追加さ
れた内容となった。また、同農相は10月11日、審査委員会の勧告に基づく2003年以
降の配分方法を発表したが、その内容は、2002年のものに比べ米国向け輸出実績を
重視するものとなっている。


6.日本向け豪州産牛肉の販売促進活動を強化
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によれば、日本への豪州産牛肉輸出量は、
6月までの暦年累計で前年同期比44%減、2001/02年度(7〜6月)では前年度比
28%減の243,438トンと、ここ10年で最も少ない水準となった。こうした中、連邦
政府のトラス農相は7月11日、この打開策として、連邦政府が日本での販売促進活
動に「異例の」5百万豪ドルを支援することを発表した。MLAは、02/03年度に
おいて連邦政府の支援を含め約1千6百万豪ドルの販売促進活動を日本市場で行う
予定である。


7.NZで食品安全庁が設立
 ニュージーランド(NZ)政府は7月1日、食品安全性に関する行政を担当する
新たな機関としてNZ食品安全庁(New ZeaLand Food Safety Authority)を設
立した。従来、NZの食品行政は、保健省が国内販売食品と輸入食品、農林省が主
要加工品と輸出食品を所掌するなど2省で実施されてきたが、この機関の設立によ
り、2省がそれぞれ所掌する食品の安全性と保証責任に関する行政が1つの機関の
業務として統合された。


8.口蹄疫模擬演習「ミノタウロス」実施(豪州)
 豪州では9月9日から約1週間にわたって、全国規模での口蹄疫発生を想定した
机上の模擬演習、「ミノタウロス演習」が実施された。これは、昨年7月の豪州政
府評議会(COAG)でその実施について合意され、今年3月にその計画が公表さ
れていたもので、豪州においてこれまで行われたこの種の演習としては最も大規模
かつ複雑に家畜疾病発生時の対応を試す機会として計画されたものであった。連邦
政府のトラス農相は演習の終了に際して、本演習は今後の豪州家畜産業にとって非
常に価値あるものであったと総括している。


9.酪農生産者に団体交渉権を認可(豪州)
 豪州消費者自由競争委員会(ACCC)は3月13日、酪農生産者が乳業メーカー
と価格などの条件について団体で交渉する権利を正式に認可することを決定した。
この決定は、2001年10月3日にACCCが発表した草案に検討を加え最終的に行っ
たもので、当初草案どおり2005年7月1日までの期限付きながら、酪農生産者はメ
ーカーとの生乳供給契約の際、価格などの条件について団体で交渉することができ
ることとなった。豪州では、2000年7月の酪農乳業改革ですべての生乳取引が自由
化されたが、商業法により販売側(酪農家)が団体で価格を交渉する権利が厳しく
制限されていたことから、酪農生産者団体は、生産者が団体で乳価交渉をすること
を可能とするよう例外的な取扱をACCCに求めていたものである。その後、4月
に大手乳業会社ナショナルフーズが、ACCCを相手として、連邦裁判所の一部で
ある豪州自由競争審判所(ACT)に提訴したが、ACTは8月にACCCの認可を
正当と認める判決を行っている。


10.家畜伝染病緊急対応協定が官民合意(豪州)
 豪州連邦政府のトラス農相は3月20日、3月上旬に官民で合意された家畜伝染病
緊急対応協定(Emergency Animal Disease Response Agreement)について正式
に発表した。この協定は昨年8月、豪州ニュージランド農業資源管理評議会で合意
された家畜伝染病緊急対応準備(Emergency Animal Disease Response 
Preparedness)プログラムの一環として家畜伝染病発生時の関連コストを官民で分
担して負担することを主な内容とし、家畜伝染病発生に対する初期対応のための資
金供給を確実にするものである。


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