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2002年のチリ牛肉生産は増加見込み


【ブエノスアイレス 玉井 明雄 6月26日発】チリ農業省農業政策・調査局(O
DEPA)によると、2001年の牛肉生産量(枝肉ベース。以下同じ)は、前年比3.9
%減の21万8千トンとなった。チリの牛肉生産量は、97年をピークに減少しており、
99年が干ばつに伴う粗飼料不足などにより11.7%減の22万6千トン、2000年も前年
の干ばつの影響が引き続いたことなどから前年同の22万6千トンとなった。

 牛と畜頭数の推移を見ると、2001年は、前年比7.5%減の87万頭となった。これ
をカテゴリー別に見ると、去勢牛は、46万2千頭と前年をわずか0.6%上回ったが、
経産牛は、20.0%減の17万1千頭、未経産牛は、12.1%減の18万6千頭などとなり、
去勢牛以外はすべて前年を下回った。雌牛のと畜頭数が減少した要因については、
乳価が高値で安定していたことから雌牛の保留傾向が強まったためとしている。な
お、1頭当たりの平均枝肉重量は、良好な天候条件により牧草の生育状態が良かっ
たことなどから3.7%増の250kgとなった。

 一方、2001年における生体牛価格については、去勢牛が2.0%高の532.7チリペソ
(約91円:1チリペソ=約0.17円)と前年を上回ったものの、経産牛は、2.6%安
の321.4チリペソ(約55円)となった。と畜頭数の大幅な減少にもかかわらず経産
牛価格が下落した要因として、食肉消費に当たり牛肉と競合関係にある鶏肉や豚肉
の生産が大幅に増加したことなどを挙げている。

 チリでは、90年代における牛肉の需要増加に伴い輸入が増加し、2001年は牛肉需
要量(枝肉ベース)の約6割を輸入でまかなっている。2001年の1人当たりの牛肉
消費量は、90年に比べ4.4kg増の23.2kgとなった。しかし、ここ2〜3年の牛肉消
費量はほぼ横ばいで推移し、さらに自国通貨が安値で推移したことから、2001年の
牛肉(冷蔵肉および冷蔵肉)輸入量(製品重量ベース)は、前年比1.6%減の8万
5千トンとなった。なお、全輸入量のうち冷蔵肉が約8割を占めている。

 牛肉の供給国を見ると、ブラジルとパラグアイの2カ国で全輸入量の9割強を占
める。最大の供給元であるブラジルは前年比82.4%増の5万3千トン、パラグアイ
は20.3%増の2万6千トン、アルゼンチンは86.6%減の4千トンなどとなった。ア
ルゼンチンは、99年に全輸入量の約半分を占めていたが、2001年3月の同国におけ
る口蹄疫発生で同国産牛肉輸入が停止されたことなどから、主要な供給元がブラジ
ルおよびパラグアイへシフトしている。

 チリ農牧庁の2002年3月19日付け決議833号によると、口蹄疫清浄国または同地
域が、そのステータスを喪失した場合、6カ月間に渡り口蹄疫が発生しなければ、
一定条件のもと、牛肉の輸入が許可される。なお、冷凍肉およびひき肉は対象外と
なっている。一方、アルゼンチン農畜産品衛生事業団(SENASA)によると、
同国における口蹄疫最終発生は、2002年1月22日であることから、決議833号によ
れば、同年7月23日以降、アルゼンチン産牛肉輸入が可能となる。しかし、輸入解
禁に当たり、チリの家畜衛生調査団によるアルゼンチンでの家畜衛生状況に関する
事前調査が必要であることから、アルゼンチン側は、6月中旬に調査を実施するよ
う要請したが、チリで鳥インフルエンザが発生した影響で、調査団の派遣に遅れが
生じているものとみられる。

 2002年におけるチリの牛肉需給見通しについて、ODEPAによると、2001年10
月頃から始まった乳価の下落により、雌牛の保留傾向が弱まり、牛と畜頭数は、前
年比3.4〜14.9%増の90〜100万頭と見込まれていることなどから、牛肉生産量は、
90年代の水準に近い14.7%増の25万トンと予測されている。また、牛肉輸入量は、
前年並と見込まれている。


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