ALIC/WEEKLY


米国の食肉団体、FDAによる飼料規制強化に反対を表明


AMI、業界のリーダー的存在としてBSE問題に対しても積極的に力を発揮
 
  アメリカ食肉協会(AMI)は、1,100を超える食肉パッカーや加工業者などを
会員とする全米最大の食肉業界団体であり、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)
や全国豚肉生産者協議会(NPPC)といった生産者団体ともしばしば共闘して強
硬なロビー活動を展開し、米国政府や連邦議会における国内政策や貿易問題な
どに関する意思決定過程にも大きな影響力を及ぼしている。
 
  BSE(牛海綿状脳症)の問題に関しても、AMIは、業界のリーダー的存在とし
て、これまでにも、消費者の信頼確保のためのセミナーの開催(本紙通巻478
号参照)といった積極的な取り組みを行ってきており、昨年12月17日にも、FDA
や米農務省(USDA)の出席の下、国内の主要畜産関係団体を参集してのBSE円
卓会議を主催している。


FDAの飼料規制強化の動きに対し、関係団体が共同のコメントを提出

  この円卓会議では、現行のBSE関連規制に関する一連の見直しの動き(既報
のとおり)について、政府側から状況報告を受けた後、特に、昨年11月のFDA
による飼料給与規制強化に関するパブリックコメント募集(本紙通巻555号参
照)に対し、個々の団体のみならず、参加団体による連名のコメントも提出す
ることが合意された。

  これを受けて、今年1月13日に、AMIをはじめ、全米最大の農業団体ファー
ム・ビューロー(AFBF)、NCBA、NPPC、全国生乳生産者連盟(NMPF)、アメリ
カ飼料産業協会(AFIA)、全国レンダリング協会(NRA)、ペットフード協会(
PFI)ら計15団体が連名でFDAにコメントを提出した。そのポイントは、 @現
行の飼料給与規制(ほ乳動物由来たんぱく質の反すう動物への給与禁止措置)
は、十分な科学的根拠に基づく適切なものであるため、これを見直す必要はな
い、 Aむしろ、すでに高い水準にある現行規制への順守率を、さらに高めて
100%にすることの方が重要である、 Bこのため、FDAによる違反事例への強
制的な履行徹底措置などを講じるべきである、との主張である。


AMIは単独で、レンダリング規制強化への反対も表明 

  さらに、こうした動きに続き、AMIは2月4日、FDA提案の中の「2歳以上
の反すう動物由来の脳や脊髄をレンダリング原料から除外する」という点に焦
点を絞り、「科学的な正当性がなく、国際貿易にも悪影響を及ぼすものである
ため、現行規則の順守徹底を図ることで十分」として、FDAによる現行規制の
強化の動きに対し異を唱える独自のコメントを提出した。

 具体的には、次の6点が指摘されている。

(1) BSEが存在しない米国産牛の脳や脊髄には、BSEのリスクはない(これら
  を「高危険部位」などと呼ぶのもおかしい)。

(2) 現行の給与規制措置と重複する措置であり、BSEのリスク低減には直結し
    ない。

(3) すでに効果的なBSEのまん延防止措置がとられている。

(4) 現行措置の完全な順守が、最大限のBSEのまん延防止効果をもたらす。

(5) 国際基準以上に追加的な措置をとることは、米国のBSE(清浄国)ステイ
    タスが疑われ、国際貿易交渉も台無しになる。

(6) 施設や処理手続きの変更などにより、業界全体に深刻で不当な経済的負
    担が課されることとなる。
 
  こうしたAMIをはじめとする業界の主張と、かねてから規制強化を求めてき
た消費者グループの主張を、FDAがどのように折り合いをつけるのか、「近い
将来」とされる規則案の公表が待たれるところである。

  
【ワシントン駐在員 渡辺 裕一郎 2月5日発】

元のページに戻る