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干ばつの影響で冬穀物は8年、夏穀物は20年ぶりの不作予測(豪州)


冬穀物は8年ぶり、夏穀物は20年ぶりの不作予測

  豪州農業資源経済局(ABARE)は2月18日、四半期ごとに発表されている
最新の2002/03年度の穀物レポートを発表した。今回の報告は、長引く干ばつの
影響により昨年12月の発表(本誌第 559号参照)よりもさらに悪化した状況を伝
えており、すでに収穫が終了した冬穀物、作付けが終了した夏穀物とも生産量見
通しが下方修正されている。概要は以下の通り。


○冬穀物

  2002/03年度の生産量は、前年度比61.2%減の1,540万トンと見込まれ、94/95
年度以来最も少ない収穫になる見通しである。このうち冬穀物主要4品目(小麦、
大麦、カノーラ、ルーピン)について、前年度比61.9%減の1,381万トンと見込ん
でいる。
02/03年度冬穀物主要生産量予測(単位:千トン、%) 
品名 01/02年 02/03年 増減率
小麦 24,854 9,385 ▲62.2
大麦 8,423 3,268 ▲61.2
カノーラ 1,797 621 ▲65.4
ルーピン 1,220 537 ▲56.0

 計

36,294 13,811 ▲61.9
注:01/02年度の生産量についても修正された。
  州別に見ると、タスマニア州を除くすべての州で前年度と比べて大幅な減少を
見込んでいる。ニューサウスウエールズ(NSW)州は前年度比で77. 0%減の
225万トン、ビクトリア(VIC)州は同69.5%減の172万トン、南オーストラリ
ア州は58.0%減の380万2千トン、西オーストラリア州は 49.5%減の614万トンと
なっている。  
   

○夏穀物

  2002/03年度の夏穀物の作付面積は、前年度比44.3%減の93万ヘクタールと予
測している。干ばつによるかんがい用水の不足が、綿実や米といったかんがいに
依存する夏穀物の播種に大きな影響をもたらしている。綿実の作付面積は前年度
比52.4%減、米の作付面積は同69.3%減とみている。また、少量の雨でも成長す
るソルガムやサンフラワーでさえも、降雨量が播種に必要とされる量に満たなか
ったため、作付面積は大幅に減少するとみられている。

  このような作付け見通しから、夏穀物生産量は前年比61.9%減の195万トンと
予測され、82/83年度の干ばつ以来、最も少ない収穫となる見通しである。
 
02/03年度夏穀物主要生産量予測(単位:千トン、%) 
品名 01/02年 02/03年 増減率
1,275 370 ▲71.0
綿実 980 371 ▲62.1
ソルガム 2,123 755 ▲64.4
  
  特に、家畜の飼料として利用されるソルガムの生産量の減少は、畜産に与える
影響が大きい。
 
  トラス農相は、この報告を受け、ABAREのレポートを引用して「豪州全体
の純農業生産額(農業粗生産額からコスト部分を差し引いた額)は、01/02年度
は100億豪ドル(約7,100億円:1豪ドル=71円)であったが、02/03年度では22
億豪ドル(約1,560億円)と見込まれ、干ばつによりこの一年で約80%が消えて
しまうことになるだろう」と述べ、干ばつの影響の深刻さを伝えるとともに、
「豪州連邦政府は既に農家支援策として向こう2年間にわたって9億豪ドル(約
640億円)の支援を公約している」と付け加えた。


遅すぎた最近の降雨

  一方、豪州気象局では干ばつの原因とみられるエルニーニョ現象が弱まってき
ているとの見方を示しており、また、米国でも同様な観測があることから、楽観
はできないものの干ばつが終息の方向に向かいつつあるとの見方が強まっている。

  2月に入って、NSW州やVIC州などの穀倉地帯にもようやくまとまった雨
が降ったが、「夏穀物には遅すぎた」というのが穀物関係者の一般的見解であり、
穀物生産者などは次の冬穀物作付時期までに相当量の降雨を切望している。
 
【シドニー駐在員 井上 敦司 2月26日発】 
 
 
 

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