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全国農相会議、干ばつ対策、生体家畜輸出など検討(豪州)


干ばつ対策、EC認定手続きを合理化へ

  連邦政府と豪州各州(準州を含む)政府の第一次産業大臣による「第一次産業大臣会議」が
5月19日、アデレードで行われた。第一次産業大臣会議は、豪州の第一次産業が抱えるその時
々の問題について検討するため、年2回定期的に開催されている。

  今回の会議では、@干ばつ対策の見直し A生体家畜輸出規則草案 B酪農乳業界の厳しい現
況 C牛に関する個体識別制度の義務化の実施 D緊急家畜疾病対策−などが検討された。主な
議題と概略は次の通り。

 
○干ばつ対策

  2002年から発生した干ばつに対する生産者などのへの救援策については、連邦政府と州政府
間の財源負担割合や干ばつによる例外的環境(EC)認定地域の評価認識の違いなどで問題が
生じたため、干ばつ対策見直しの機運が高まり、今年4月、全国干ばつ会議が開催された。

  本会議では、全国干ばつ会議で指摘された財源負担問題やEC認定手続きの合理化などの課
題を考慮に入れ、新たな干ばつ対策を策定することが合意され、2004年7月に具体的な方策に
ついてさらに検討することとなった。

  連邦政府のトラス農相は会議の席上、干ばつ対策の見直しには、「州政府の財政的支出が欠
かせない」と述べ、州政府の協力を強く要請している。

  
○生体家畜輸出

 生体家畜輸出の改善については、先にケニリーレポートに基づいた連邦政府の改革案が発表
されたところであり、本会議では、連邦政府が定める生体輸出規則の草案が示された。草案は
各州政府から大筋において支持を得、連邦政府は次の会議で規則制定の進捗状況の報告を行う
こととなった。


○農業貿易問題

  連邦政府から、最近調印または調印が予定される米国やタイとのFTA協定の結果が報告さ
れるとともに、その他の国、特に中国とのFTA協定に向けた取り組みについて、各州政府か
ら歓迎の意向が示された。また、連邦政府から世界貿易機関(WTO)農業交渉の再開につい
ての報告がなされた。


○酪農乳業の現況

  現在の豪州酪農乳業界は、長期的には改善の見通しがあるものの、現時点では、干ばつと豪
ドル高の影響を受け困難な状況にあるとの認識で一致した。次回の会議までに、より詳細な現
状分析結果の報告がなされることとなった。


○NLIS
 
  個々の牛に対して電子標識(耳標ほか)装着を行い管理する全国家畜個体識別制度(NLI
S)の義務化導入に向けた全国的な実施基準の策定とNLISに対する理解の向上を図るため
の全国的なコミュニケーション戦略の策定について合意された。

  NLISの義務化については、一部の州の生産者などから耳標代などのコスト負担増の問題
などにより依然、反対意見が出ている。


○BSE問題

  牛海綿状脳症(BSE)に関連して豪州牛肉輸入市場の求めに応じるため、@家畜個体識別
A動物由来の肉骨粉の反すう動物への飼料給与禁止についての監視体制の強化や誤って給与さ
れないよう飼料表示の改善などの対策を速やかに行う必要があることで合意した。


○緊急家畜疾病対策

  口蹄疫(FMD)やBSEなどの緊急に対処を要する家畜の疾病発生に関する予防や準備の
ための対策が、2004年6月末までに常設される委員会に提出される予定になっている。また、
2005年に第二回目の緊急家畜疾病発生の演習(一回目は2002年にFMDの演習実施)を行うこ
とで合意した。


○その他

  病害虫や疾病の危険に対応するため、緊急時に有用な情報の発信を行えるウエッブサイトの
構築に合意した。また、炭そ病ワクチンの官民一体での供給体制の確立、採卵鶏に関する福祉
問題の再検討、肉用牛の動物福祉に関する新しい規則などについて検討された。また次回の会
議では研究開発への投資効果も主要な検討課題の一つとなるとされた。




【シドニー駐在員 井上 敦司 平成16年6月2日発】 
 
 
 

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